父が亡くなり、箕面市にある土地と建物、預貯金を兄弟と相続することになりました。
私は独立して商売を始めたときに、小さいものですが父から店舗用の建物を贈与されていました。
兄弟は、この時に私に贈与された建物は特別受益にあたると言うのですが、何年か前の地震に被災した際に既に取り壊しており、現在は残っていません。
この場合でも、建物の評価額が特別受益にあたるのでしょうか。

司法書士

お父さまに贈与された建物は地震により今現在は存在しないので、そもそも特別受益にあたらないのではないかというご相談です。
一般的には、この場合には特別受益は消滅して持ち戻しの対象にはならいと考えられています。

特別受益とは → 質問3-6

特別受益の評価(1) → 質問3-7

超過特別受益 → 質問3-9

まず、民法は特別受益がった場合の相続分の計算方法について次のように規定しています。

共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。

民法903条1項

このように、特別受益がった場合には「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし」て相続財産の総額を決定してから各自の相続分を割り出すことになります。

そして、特別受益にあたる財産(贈与された物等)が、贈与を受けた者の行為によって無くなってしまった場合についても民法が定めています。

前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。

民法904条

1.特別受益にあたる財産が天災で無くなった場合について

この場合、直接民法には規定がありませんが、上記904条が「受贈者(贈与を受けた人)の行為によって」と定めていることから、この反対として天災等の「受贈者の行為によって」とは言えない場合には904条の適用はないと考えられています。

なので、特別受益にあたる財産が天災で無くなった場合には903条による特別受益の持ち戻しはなされません。

2.特別受益にあたる財産に経年劣化等による自然損耗がある場合

今回のご相談とは直接関係しませんが、仮に、特別受益にあたる財産に経年劣化等による自然損耗がある場合はどうなるのかと言いますと、この場合は、特別受益として贈与を受けたときの評価額で計算するとされています。

一般的に、特別受益として財産を受けたものは、その財産を受けたときを基準として金銭的価値に評価されるので、特別受益にあたる財産に経年劣化等による自然損耗がある場合もこの一般原則に従うことになるからです。