夫が亡くなりました。相続人は私と娘の2人です。
今、わかっている範囲では池田市内にある家と土地の不動産と預貯金が相続財産になります。
夫と住んでいた家にそのまま住みたいのですが、法定相続分で遺産分割すると夫の預貯金は相続できないと言われました。
預貯金もある程度は相続したいのですが、何か良い方法はありませんか?

司法書士

まず、遺産分割は絶対に法定相続分に従って行わなければならいということはありません。
なので、娘さんも納得しているのであれば、遺留分も問題になりませんので自由に遺産を分割することができます。
ただ、娘さんがどうしても法定相続分は欲しいという場合は「配偶者居住権」という制度を利用することが考えられます。
一般的に不動産の相続とは不動産「所有権」の相続を言います。
「配偶者居住権」とは文字通り、残された配偶者が住み慣れた建物に住み続ける権利のことです。
「配偶者居住権」は一般的には所有権より低い金額とされますので「所有権」を相続するより安価となり、その他の預貯金を相続できる場合が多くなります。

遺留分について → 質問3-2

遺産分割協議の種類 → 質問4-1

遺産分割協議の方法 → 質問4-2

配偶者居住権の具体例

例えば、土地金額が1,500万円、建物の金額が500万円、預貯金は2,000円であったとします。
この場合、妻が相続不動産にそのまま住み続けたいという場合、土地と建物を相続します。
妻と娘の法定相続分は2分の1ずつなので、土地と建物の合計金額が2,000万円とすると、預貯金は相続できないことになります。
この場合、妻に自分名義の現金、預貯金がないと不動産を相続しても生活に行き詰まることもあります。
そこで、「妻がそのまま住み続ける権利」を相続し、不動産の所有権は娘が相続するということもできます。
この「妻がそのまま住み続ける権利」を「配偶者居住権」と言います。
配偶者居住権は一般的には所有権より低い金額とされます。
配偶者居住権が400万円の場合、妻が配偶者居住権と預貯金1,600万円、娘が土地の所有権1,500万円、建物の所有権100万円(500万円-400万円(配偶者居住権))、預貯金400万円となり、妻も1,600万円の預貯金を手元に残すことができます。

注:上記の計算はあくまで制度概要を簡単に説明するための例です。
実際の配偶者居住権の算定基準はいくつか示されていますが、国税庁が公表している基準では次のようになります。

国税庁ウェブサイト(タックスアンサーNo.4666 配偶者居住権等の評価)より抜粋
配偶者居住権の価額
=建物の相続税評価額-建物の時価×(耐用年数-経過年数-存続年数)÷(耐用年数-経過年数)×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
*耐用年数は減価償却資産の耐用年数等に関する省令に定める住宅用の耐用年数を1.5倍したものです。
 経過年数は築年数です。
 存続年数は平均余命から現在の年齢を引いた年数です。