叔父が亡くなりました。叔父は豊中市内で1人暮らしをしており、兄弟は私の父だけでした。父と叔父の親、私から言うと祖父母は既に亡くなっておりますので、叔父の相続人は父1人になります。
叔父は借金を抱えており、特にこれという財産も無かったものですから、相続放棄をするかどうかを父が悩んでいたのですが、その父も先日亡くなりました。
この場合、私は叔父の相続を放棄することができるのでしょうか。

司法書士

お父様が亡くなられた時期にもよりますが、ご相談者様が叔父様の相続を放棄することは可能です。

法定相続人とは → 質問1-1

差し押さえと相続放棄 → 質問6-1

相続放棄と新相続人 → 質問6-3

相続放棄の取り消し → 質問6-4

1.相続放棄の時間制限について(再転相続)

相続放棄は自身が相続することを知った時から3か月以内にする必要があります。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

そして、ご相談のように相続人が相続放棄をしないまま亡くなってしまった場合を再転相続と言いますが、この場合もご自身が相続の開始を知った時から3か月を計算すると定められています。

民法第九百十六条 相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

2.最高裁判所が考える民法916条の意味

最高裁判所はこの民法916条について次のように考えています。
「民法916条の規定は、甲の相続につきその法定相続人である乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合には、乙の法定相続人である丙のために、甲の相続についての熟慮期間を乙の相続についての熟慮期間と同一にまで延長し、甲の相続につき必要な熟慮期間を付与する趣旨にとどまるのではなく、右のような丙の再転相続人たる地位そのものに基づき、甲の相続と乙の相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して、各別に熟慮し、かつ、承認又は放棄をする機会を保障する趣旨をも有するものと解すべきである。」(最判昭和63年6月21日家月41巻9号101頁)

3.再転相続の具体例について

Aさんの相続人がBさん(これを第1相続とします)、Bさんの相続人がCさん(これを第2相続とします)とします。
この場合、Cさんは第1相続と第2相続を両方とも承認することもできます。
また第1相続を放棄して、第2相続だけを承認することもできます。
ご相談のように叔父様に多額の借金があり相続したくないが、お父様には相続したい財産があるという場合には、このように第1相続は放棄して、第2相続は承認することになると思われます。
注意を要するのは、これとは逆に、第2相続を放棄した場合には第1相続を承認したり放棄したりすることはできません。
第2相続を放棄した場合には本来Bさんが持っていたAさんの相続についての承認・放棄を決定する権利を失うことになるからです。
ただし、まず第1相続を放棄して、その後に第2相続を放棄した場合には、遡って第1相続の放棄が無効になることはありません。

上記の最高裁判所の判例も同じことを言っています。

そうであつてみれば、丙が乙の相続を放棄して、もはや乙の権利義務をなんら承継しなくなつた場合には、丙は、右の放棄によつて乙が有していた甲の相続についての承認または放棄の選択権を失うことになるのであるから、もはや甲の相続につき承認または放棄をすることはできないといわざるをえないが、丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、かつ、甲の相続につき放棄をしても、それによつては乙の相続につき承認または放棄をするのになんら障害にならず、また、その後に丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼつて無効になることはないものと解するのが相当である。

相続放棄と登記 → 事例紹介

相続放棄が可能な期間 → 事例紹介

再転相続人の相続放棄 → 事例紹介

再転相続の場合の熟慮期間 → 事例紹介