私には娘がおりましたが、半年前に長い闘病の末に亡くなりました。
娘は箕面市に一戸建ての不動産を夫との共有名義で所有しており、預貯金や株式も持っていたようです。娘には夫とすでに成人している子供が2人いるので、夫と子供2人で遺産分割をして相続手続きを終えました。
しかし、1つ問題が出てきました。
私も知らなかったのですが娘には夫と結婚する前にお付き合いしていた方との間に子供がいたらしく、その子が相続を主張してきたのです。
この場合も4-5の相談者さんのように相続分の価格を支払うということになるのでしょうか。

司法書士

お聞きした状況では、娘さんの残されたご家族(相続人)は相続分の価格をそのお子さんに支払うのではなく、遺産分割手続きをやり直すことになります。

遺産分割協議の方法 → 質問4-1

胎児と遺産分割協議 → 質問4-3

1.遺産分割協議後に新たな相続人が生じた場合

4-4.のご質問のように遺産分割後に新たに相続人が生じた場合はおっしゃる通り、民法910条によって新たに生じた相続人には価格支払い請求権が認められますので、残された相続人はその相続人の相続分についての価格を支払う必要がありますが、遺産分割は有効と認められますので、遺産分割をやり直す必要はありません。

2.遺産分割協議後に既に相続人であったものが見つかった場合

(1)相続人に関しての父子関係と母子関係の相違点

今回のご相談のお子さんは4-4.のご相談で死後認知によって新たに相続人となったのではなく、初めから娘さんお相続人であったものが単に発見されただけと扱われますので、4-4.とは状況が異なります。
父子関係は認知より発生しますが、母子関係は分娩の事実により当然に発生すると考えられているからです。

遺産分割協議後の相続人 → 質問4-4

(2)遺産分割協議後に既に相続人であったもの(母が産んだ子)が見つかった場合

この場合、裁判所は父子関係における死後認知の場合に民法910条を適用して価格支払い請求を認めのとは異なり、母子関係の場合には同条を類推適用することを否定するので、遺産分割をやり直すことになります。
死後認知の場合は遺産分割の時点で、その相続人は存在していなかったので、遺産分割手続きに問題はなかったと考えられます。
これに対して、遺産分割時にすでに相続人として存在していた者がいたのに、その者を除外して行われた遺産分割手続きには問題があるといえるので、遺産分割をやり直すべきだと考えられます。

相続財産に属する不動産につき単独所有権移転の登記をした共同相続人の一人及び同人から単独所有権移転の登記をうけた第三取得者に対し、他の共同相続人は登記を経なくとも相続による持分の取得を対抗することができるものと解すべきである。
けだし、共同相続人の一人がほしいままに単独所有権移転の登記をしても他の共同相続人の持分に関する限り無効の登記であり、登記に公信力のない結果第三取得者も他の共同相続人の持分に関する限りその権利を取得することはできないからである(最高裁判所昭和三五年(オ)第一一九七号同三八年二月二二日第二小法廷判決・民集一七巻一号二三五頁参照)。
そして、母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず分娩の事実により当然に発生するものと解すべきであつて(最高裁判所昭和三五年(オ)第一一八九号同三七年四月二七日第二小法廷判決・民集一六巻七号一二四七頁参照)、母子関係が存在する場合には認知によつて形成される父子関係に関する民法七八四条但書を類推適用すべきではなく、また、同法九一〇条は、取引の安全と被認知者の保護との調整をはかる規定ではなく、共同相続人の既得権と被認知者の保護との調整をはかる規定であつて、遺産分割その他の処分のなされたときに当該相続人の他に共同相続人が存在しなかつた場合における当該相続人の保護をはかるところに主眼があり、第三取得者は右相続人が保護される場合にその結果として保護されるのにすぎないのであるから、相続人の存在が遺産分割その他の処分後に明らかになつた場合については同法条を類推適用することができないものと解するのが相当である。

最判昭和54年3月23日民集第33巻2号294頁

死後認知と再審 → 事例紹介

認知者死亡後の認知無効 → 事例紹介