最近母が亡くなりました。
母は池田市内に家と土地を所有しており、私の妹と同居しておりました。
相続する財産はその池田市にある不動産と預貯金になるのですが、妹は母の生命保険の受取人として保険金を受けっとています。
この保険金は母の相続財産にならないのでしょうか。

司法書士

保険金の受取人が被相続人となっている場合には、通常の相続の枠組みで処理すればよいので、あまり問題になりません。つまり、遺産分割協議の中で決めるか、決まらなければ法定相続分で分けることになります。
これと異なり、保険金の受取人が相続人である場合に、この保険金が特別受益になるのかが問題とされています。
誰が保険金の受取人になるかは保険契約上の権利者の話なので、特別受益には当たらないと思われますが、そうすると保険金を受け取った相続人と受け取らなかった相続人との間で不公平が生じるのではないかという疑問があるからです。
この点、最高裁判所は次のように判示しました。

特別受益とは → 質問3-4

特別受益と具体的相続分 → 質問3-6

寄与分とは → 質問3-3

最決平成16年10月29日民集58巻7号1979頁より抜粋


被相続人が自己を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人と指定して締結した養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は,その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産に属するものではないというべきである(最高裁昭和36年(オ)第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)。
被相続人が自己を保険契約者及び被保険者とし,共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人と指定して締結した養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は,その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって,保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく,これらの者の相続財産に属するものではないというべきである(最高裁昭和36年(オ)第1028号同40年2月2日第三小法廷判決・民集19巻1号1頁参照)。
また,死亡保険金請求権は,被保険者が死亡した時に初めて発生するものであり,保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく,被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであるから,実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることはできない(最高裁平成11年(受)第1136号同14年11月5日第一小法廷判決・民集56巻8号2069頁参照)。
したがって,【要旨】上記の養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。 もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。
上記特段の事情の有無については,保険金の額,この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。

 このように、一定の場合には、保険金請求権が特別受益にあたることがしめされましたが、「特段の事情」の判断基準や、どれだけの金額が特別受益となるのかはやはり、その家庭ごとに判断するしかないようです。

売主の相続登記と移転登記 → 質問5-2