私には兄が1人いるのですが、先日亡くなった母は、この兄を溺愛しており、兄の結婚の際に、母が両親から受け継いだ箕面市にある土地と建物を贈与していました。にまた、母は遺言を残しており、そこには兄に贈った不動産については持ち戻しを免状すると記載されていました。
母自身は老人ホームに入っていたので、残された財産は預貯金がいくらかあるくらいです。
兄へ送られた不動産の価格は私の遺留分を上回る額なのですが、母の遺言で持ち戻しの免除がされている以上、私は何も兄に請求できないのでしょうか。

司法書士

箕面市にある不動産が、お兄様へ送られたのが10年以内の話であれば、遺留分侵害額をお兄様に請求することができる可能性があります。
ご相談のようにお母さまが持ち戻しを免除するとの遺言を残していたとしても、変わりません。

遺留分侵害額とは → 質問3-2

特別受益と相続分の関係 → 質問3-6

超過特別受益とは → 質問3-9

もともと、遺留分制度は被相続人(亡くなって相続の対象となる人)の財産処分の自由を制限してでも相続人に一定割合の財産の取得を保障しようとする趣旨の制度です。
そこで、最高裁判所は持ち戻しの意思表示があったとしても、この遺留分制度の趣旨に照らして、遺留分算定の基礎については参入の対象になると考えていました。

(2) ところで,遺留分権利者の遺留分の額は,被相続人が相続開始の時に有し ていた財産の価額にその贈与した財産の価額を加え,その中から債務の全額を控除 して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し,それに遺留分割合を乗ずるなどして 算定すべきところ(民法1028条ないし1030条,1044条),上記の遺留 分制度の趣旨等に鑑みれば,被相続人が,特別受益に当たる贈与につき,当該贈与 に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の意思表示(以下「持戻 し免除の意思表示」という。)をしていた場合であっても,上記価額は遺留分算定 の基礎となる財産額に算入されるものと解される。
したがって,前記事実関係の下 においては,上記(1)のとおり本件遺言による相続分の指定が減殺されても,抗告 人らの遺留分を確保するには足りないことになる。
本件遺留分減殺請求は,本件遺言により相続分を零とする指定を受けた共同相続 人である抗告人らから,相続分全部の指定を受けた他の共同相続人である相手方ら に対して行われたものであることからすれば,Aの遺産分割において抗告人らの遺 留分を確保するのに必要な限度で相手方らに対するAの生前の財産処分行為を減殺 することを,その趣旨とするものと解される。
そうすると,本件遺留分減殺請求に より,抗告人らの遺留分を侵害する本件持戻し免除の意思表示が減殺されることに なるが,遺留分減殺請求により特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が減殺された場合,持戻し免除の意思表示は,遺留分を侵害する限度で失効し,当該贈与に係る財産の価額は,上記の限度で,遺留分権利者である相続人の相続分に加算され,当該贈与を受けた相続人の相続分から控除されるものと解するのが相当である。
持戻し免除の意思表示が上記の限度で失効した場合に,その限度で当該贈与に係る財産の価額を相続財産とみなして各共同相続人の具体的相続分を算定すると,上記価額が共同相続人全員に配分され,遺留分権利者において遺留分相当額の財産を確保し得ないこととなり,上記の遺留分制度の趣旨に反する結果となることは明らかである。

最判平成24年1月26日家月64巻7号100頁

現在はこの最高裁判所の判例の考え方を明文化する形で法改正が行われています。

(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

この民法1044条3項の「「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。」という部分により、遺留分算定の基礎として相続財産を計算する際に被相続人の残した持ち戻し免除の意思は考慮しないこととされています。