私には息子がいるのですが、その息子が急逝してしまいました。
息子は結婚を機に、池田市内にあるマンションを購入して夫婦で住んでいたのですが、先日、マンションの購入時に組んでいたローンに関する抵当権の解除通知が届いたようです。
そこで、マンションの相続登記等の相続についての手続きを行おうと思うのですが、息子の妻は現在、妊娠しています。
この場合、お腹の子供も交えて遺産分割をしなければならいのでしょうか。

司法書士

お腹のお子さんも息子さんの相続人になるので、遺産分割はいずれ行わなくてはいけないのですが、無事にお生まれになってから遺産分割協議を行うことになります。

法定相続人 → 質問1-1

離婚した配偶者との間の子と法定相続人 → 質問1-2

再婚した配偶者の連れ子と法定相続人 → 質問1-3

遺産分割協議の仕方 → 質問4-2

遺産分割後後の相続人 → 質問4-4

1.相続人と胎児

民法887条1項によれば、「被相続人の子は、相続人となる。」と定められていますので、まず被相続人(亡くなられて相続の対象となる方)の子供は相続人になります。
そして、民法886条1項は「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。」と定めているので、胎児であったとしても相続人になります。

2.遺産分割協議の当事者

遺産分割協議の当事者は包括受遺者(民法990条)や、相続分の譲受人等がなることもありますが、基本的には相続人がなります。
そして、当事者の一部を欠く、遺産分割協議は無効と考えられています。
上記の通り、民法886条1項により胎児も相続人になるので、遺産分割協議の当事者となりそうです。

しかし、同条の2項では「前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」と定めていることから、(1)胎児が出生した場合に、相続開始時にさかのぼって権利能力があったものとして考えるのか、(2)胎児であっても権利能力を認めて、死産の出会った場合にはさかのぼって権利が発生しなかったものとして考えるのか、考え方が分かれています。

(2)の考え方によると、胎児であっても権利能力を認めるので、母親が胎児を代理して遺産分割協議をすることができます。
ただ、出産までの期間はある程度、限られたものですので、出産までは分割協議はできないと一般には考えられています。

これに対して(1)の考え方によれば、胎児が出生した場合に権利能力が認められるので、胎児の間はそもそも遺産分割協議の当事者となることができません。
この場合に、胎児のままで遺産分割協議がなされたときは民法910条の類推適用によって価格賠償による処理をするということも主張されています。

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)
第九百十条 相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

3.特別代理人の選任

例えば,父が死亡した場合に,共同相続人である母と未成年の子が行う遺産分割協議など,未成年者とその法定代理人の間で利害関係が衝突する行為(利益相反行為)をするには,子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません。

(利益相反行為)
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

司法書士

お子さんがお生まれになってから遺産分割協議を行うとしても、場合によっては上記の通り遺産分割協議自体が利益相反行為となり、お子さんに特別代理人を選任しなければならないこともあります。

死後の人工生殖と親子関係 → 事例紹介