池田市 I.F.さん

祖父と父の相続放棄についての相談です。
祖父は父の他に2人の子供を残して昨年他界しました。そして、父も先日なくなくなりました。
祖父は池田市内に土地と建物を残してはいたので父にも相続分はあったのですが、父は家業について借金もありました。なので、父の事業を清算するのと同時に個人で保証していた借金もどうにかしようと母と話し合い、父については相続放棄をすることにしました。
そこで、祖父の相続もどうするのかということになり、この際、祖父の相続も放棄すればよいのではないかと思うに至りました。相続放棄ができれば池田市内の土地と建物は叔父と叔母が引き継ぐことができるようにしたいと思います。
父は祖父の相続について何にも考えていなかったと思うのですが、私が祖父についても相続を放棄することは出来るのでしょうか。

お父様の相続を放棄する前に、お爺様の相続を放棄することはできます。順番としてはまず、お爺様の相続放棄を行い、続いてお父様の相続放棄を行うことになります。
これで、お父様はお爺様を相続しなかったことになるので、お爺様の相続財産は叔父様、叔母様が引き継ぐことになるので、池田市内の不動産は親族に残すことができます。
問題は相続放棄の制限期間ですが、ご相談をお聞きする限りは期間制限も問題ないように思われます。

再転相続人の相続放棄について

ある方が亡くなり、その相続人が相続するか、相続放棄をするかをはっきりさせないまま亡くなってしまった場合に、2番目に亡くなった方の相続人が最初に亡くなった方の相続放棄をすることができるのかが争われた事案があります。

事案は不動産等の財産を有する甲が亡くなった。乙は甲の法定相続人であったが乙には借金があった。
乙は甲の相続についての判断をしないまま亡くなった。
乙の債権者は貸金を回収するために甲から乙名義で相続登記を行い、乙の持ち分を差し押さえた。
乙の相続人丙は甲と乙双方の相続を放棄したので、差し押さえの登記は無効だと主張した。
しかし、乙の債権者は丙は甲と乙の双方を相続放棄することはできず、甲から乙の相続は有効なのであるから、差し押さえは適法だと反論した。

このような事案で丙は乙の相続放棄をしながら甲の相続放棄もできるのかが争われたのですが、最高裁判所は次のように判断しました。

民法916条の規定は、甲の相続につきその法定相続人である乙が承認又は放棄をしないで死亡した場合には、乙の法定相続人である丙のために、甲の相続についての熟慮期間を乙の相続についての熟慮期間と同一にまで延長し、甲の相続につき必要な熟慮期間を付与する趣旨にとどまるのではなく、右のような丙の再転相続人たる地位そのものに基づき、甲の相続と乙の相続のそれぞれにつき承認又は放棄の選択に関して、各別に熟慮し、かつ、承認又は放棄をする機会を保障する趣旨をも有するものと解すべきである。
そうであつてみれば、丙が乙の相続を放棄して、もはや乙の権利義務をなんら承継しなくなつた場合には、丙は、右の放棄によつて乙が有していた甲の相続についての承認または放棄の選択権を失うことになるのであるから、もはや甲の相続につき承認または放棄をすることはできないといわざるをえないが、丙が乙の相続につき放棄をしていないときは、甲の相続につき放棄をすることができ、かつ、甲の相続につき放棄をしても、それによつては乙の相続につき承認または放棄をするのになんら障害にならず、また、その後に丙が乙の相続につき放棄をしても、丙が先に再転相続人たる地位に基づいて甲の相続につきした放棄の効力がさかのぼつて無効になることはないものと解するのが相当である。

最判昭和63年6月21日(昭和59年(オ)第787号)

このように、先に最初に亡くなられた方の相続放棄を行い、次に2番目に亡くなられた方の相続放棄を行うことは適法だと判断されました。

なので、ご相談においてもまず、お爺様のからお父様への相続を放棄して、それが認められてからお父様の相続を放棄することができます。
この順番で順次相続放棄を行うことで池田市内の不動産は叔父様と叔母様に残すことができます。

相続放棄には期間制限がありますが、このような再転相続の場合に期間をいつから算定するのかについてはまた別の時事でご紹介します。

相続放棄と差し押さえ → 質問6-1

相続放棄と二重の相続 → 質問6-2

相続放棄による相続順位の繰り上がり → 質問6-3

相続放棄の取り消し → 質問6-4

再転相続の場合の熟慮期間 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

池田市・豊中市・箕面市などの北摂地域や大阪市での相続登記はルピナス司法書士事務所にご相談を

相続した不動産の名義変更にまつわる煩雑な手続きを貴方専任の司法書士がサポートします。
お電話、Eメール、ラインからでも、ご相談いただけます。

友だち追加
ラインでのお問い合わせ