池田市 K.S.さん

私は池田市内で生まれ、今は大阪市に住んでいます。
先日父が亡くなり、池田市にある土地と建物を相続することになりました。
私には妹がいるのですが、妹は母と実家に住んでおり、ゆくゆくは母の世話をしながら、そのまま実家に住み続けることになると思いますので、父の相続については相続放棄をすることに決めました。
ところが、お恥ずかしい話なのですが、私が連帯保証人になっている知人がお金を返さずに行方不明になってしまい、その債権者が私の法定相続分で池田市の不動産について相続登記をして差し押さえてしまったのです。
このままでは母と妹に申し訳がたたないのですが、このような差し押さえは有効なのでしょうか。

司法書士

ご相談をお聞きする限りでは、相続放棄の手続きは期限内に完了されているようですので、たとえ債権者の差し押さえの登記がなされているとしても、その登記は無効になります。
なので、相続の対象となっていた池田市内の不動産はお母さまと妹さんの共有になっていますので、債権者が共有者になるという心配はありません。

相続放棄した不動産と差し押さえ登記の優劣

相続した不動産について、ある相続人が相続放棄をしたとします。
その相続放棄後の権利関係で相続登記を行う前に、その相続放棄をした相続人の債権者が法定相続分で相続登記をして、さらにその相続分を差し押さえる登記をするということがあります。
この場合、相続放棄が優先するのか、それとも不動産登記が優先するのかが争われた事例があり、最高裁判所は次のように判断しました。

民法九三九条一項(昭和三七年法律第四〇号による改正前のもの)「放棄は、相続開始の時にさかのぼつてその効果を生ずる。」の規定は、相続放棄者に対する関係では、右改正後の現行規定「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。」と同趣旨と解すべきであり、民法が承認、放棄をなすべき期間(同法九一五条)を定めたのは、相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして、相続人の利益を保護しようとしたものであり、同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法九三八条)、相続人は相続開始時に遡ぼつて相続開始がなかつたと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである。
ところで、別紙物件目録記載の不動産(以下本件不動産と略称する。)は、もと訴外Eの所有であつたが、昭和三一年八月二八日同訴外人が死亡し、その相続人七名中上告人およびF両名を除く全員が同年一〇月二九日名古屋家庭裁判所一宮支部に相続放棄の申述をして、同年一一月二〇日受理され、同四〇年一一月五日その旨
の登記がなされたが、Fは同日本件物件に対する相続による持分を放棄し、同月一〇日その旨の登記を経由したので、上告人Aの単独所有となつたものであることは、原審の適法に確定した事実であり、この事案を前記説示に照して判断すれば、Dが他の相続人であるF、G、H、I、A、J等六名とともに本件不動産を共同相続したものとしてなされた代位による所有権保存登記(名古屋法務局稲沢出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二四号)は実体にあわない無効のものというべく、従つて、本件不動産につきDが持分九分の一を有することを前提としてなした仮差押は、その内容どおりの効力を生ずる由なく、この仮差押登記(同出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二七号)は無効というべきである。よつて、この点に関する原判決の判断は当を得ず、この誤りが原判決主文に影響を及ぼすこと勿論であるから、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、上告人が本件不動産の所有権を単独で取得し、現在その旨の登記を経由していることは前記のとおりであるから、被上告人らは上告人に対し、本件不動産のDの持分九分の一につき、名古屋法務局稲沢出張所昭和三九年一二月二五日受付第七六二七号をもつてなされた前記仮差押登記の抹消登記手続をなすべきである。そこで、この登記手続を求める上告人の請求を正当として認容し、民訴法四〇八条一号、八九条、九六条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

この判決が下されてから、2018年に民法が改正されており、現在では次の規定が定められています。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

しかし、この規定も、上記の最高裁判所の判例を変更するものではないと考えられています。
いくつか考え方があるようなのですが、1つの考え方としては同条の「第三者」は登記が無いことを主張することについて正当な利益を有する者に限られているとするものがあります。
そして、相続放棄によって初めから相続人とはならなかったことになるのだから、法定相続分についても無権利者となるので、その無権利の相続分を差し押さえた第三者も無権利であり、登記が無いことを主張することについて正当な利益を有する者にはあたらないと考えるというものです。

いずれにせよ、相続放棄の手続きさえしっかりと行っていれば、問題は少ないと考えます。

相続放棄に関する質問1 → 質問6-1

相続放棄に関する質問2 → 質問6-2

相続放棄に関する質問3 → 質問6-3

遺産分割と登記 → 事例紹介

遺贈と登記 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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