池田市 Y.O.さん

私は池田市内で、母1人子1人の母子家庭で育ったのですが、戸籍上はAさんに認知されています。
このAさんとは今まで会ったことはなく、認知の事実も大学卒業後に戸籍を取り寄せた際に初めて知りました。ただその時は、私もAさんの子供なんだろうけど事情があって母とは結婚しなかったんだろうなとは思っていました。ところが先日、母が亡くなる前にAさんとはあったことはない、実際はBさんとの子供だけれど、当時はAさんに認知してもらうしかなったというようなことを言い残しました。
もう少し詳しく聞くことができればよかったのですが、親戚やBさんの話を聞くと、どうやら母の言っていたことは本当のようです。
Aさんの認知を無効にしてもらいたいのですが、調べてみるとAさんは既に亡くなっているようです。Aさんが亡くなっていても認知の無効を認めてもらうことはできるのでしょうか。

司法書士

認知をした方が亡くなっていたとしても、その認知が真実に反するものであるのであれば認知無効の訴えを行うことは可能です。
この場合、認知をした方がもういませんので、検察官を被告として訴えを提起することになります。

認知をした者が亡くなった後にする認知無効の訴えの可否

認知をした者が亡くなった後に、その認知が真実に反して無効だと主張したいという場合にどのような訴えを誰に対して行えばいいのかが争われた事案があります。

事案の概要は、甲が乙を認知した。その後、乙は甲の子ではないことが判明したが、その時すでに甲は亡くなっっていた。というものです。
この場合にそもそも乙は甲が亡くなっているのに認知無効の訴えを提起できるのか、できるとしても甲はいないのだからだれを被告にして訴えればいいのかが争われました。

親子関係は身分関係の基本となる法律関係であり、認知に係る親子関係が真実に反するときは、認知によつて生じた法律効果について存在する現在の法律上の紛争の解決のために、被認知者には、当該親子関係が存在しないことを確定することについて法律上の利益があるから、認知者が死亡した後であつても、認知無効の訴え
の提起を許容することが相当であり、この場合において、認知無効の訴えの相手方たる地位は、婚姻の無効又は取消しにおける相手方の地位と同様に、一身専属的なものであつて承継の対象とならないので、人事訴訟手続法二条三項の規定を類推適用して、認知者が死亡した後は検察官をもつて相手方とすべきものと解される。
したがつて、認知者が死亡した後においても、被認知者は検察官を相手方として認知無効の訴えを提起することができると解するのが相当であり、以上の解釈と異なる大審院判例(大審院昭和一六年(オ)第四七二号同一七年一月一七日判決・民集二一巻一号一四頁)は、変更されるべきである。

最判平成元年4月6日 民集 第43巻4号193頁

最高裁判所はこのように判断して、認知者の死亡後でも認知無効の訴えを提起することができると認めました。

誰を被告とするのかという点は、その後に法律が改正されて現在では上記の最高裁判所の判決に従って検察官を被告とするということが明記されています。

人事訴訟法
(被告適格)
第十二条 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者の一方が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、他の一方を被告とする。
2 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者以外の者が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、当該身分関係の当事者の双方を被告とし、その一方が死亡した後は、他の一方を被告とする。
3 前二項の規定により当該訴えの被告とすべき者が死亡し、被告とすべき者がないときは、検察官を被告とする。

ただ、認知された者が認知されたことを知った時から7年以内に訴えを提起しなければならないという認知無効の期間制限があるので注意が必要です(民法786条)。

死後認知と遺産分割協議 → 質問4-4

遺産分割成立後の死後認知 → 質問4-5

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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