池田市 F.H.さん

私の父は池田市内で何件か賃貸アパートを経営していたのですが、2年ほど前に亡くなりました。父の死後、残された家族で相続をどうするか話し合い、不動産などの相続財産について遺産分割も終えて今に至ります。
しかし、半年ほど前に、父の隠し子だという方が、父の死後に認知を求めて訴えを起こしており、それが認められたというのです。
この訴えでは何故か私たち相続人ではなく、検察官が対応していたようなのですが、私たちは関与していません。
父の子かどうかについて私たち家族にも言いたいことは色々とあったのですが、裁判をやり直してもらうことはできないのでしょうか。

司法書士

1つの方法として再審を請求することが考えられますが、死後認知の裁判が確定した後に、相続人が当事者として再審を請求することを最高裁判所は認めておりませんので、この方法は難しいかと思われます。
また、補助参加の申し出と共に再審を請求するということも考えれれますが、この場合も訴訟の当事者ではなく、あくまで補助参加人の立場で参加するものにすぎないので、どこまでご自身の主張を訴訟の場で述べることができるのかもわからない部分があります。
ただ、現状、このように補助参加の申し出とともに再審を請求することくらいしかできず、後は裁判所がどこまで主張を受け入れるかを探ることになると思われます。

死後認知の相手方と再審の当事者

父親の死後でも3年以内であれば認知を請求することができます。
そしてこの場合の認知の訴えは検察官を相手方として請求します。

民法
(認知の訴え)
第七百八十七条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父又は母の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

人事訴訟法
(認知の訴えの当事者等)
第四十二条 認知の訴えにおいては、父又は母を被告とし、その者が死亡した後は、検察官を被告とする。

このように死後認知の訴えは検察官を相手として請求することになっていますが、本来、亡くなった父親に対する認知によって相続人が増えることを考えると、最も利害関係を有するのは相続人であるようにも思われます。
そこで、人事訴訟法は死後認知の訴えが請求された場合には一定の利害関係人に通知をすることとされています。

(利害関係人に対する訴訟係属の通知)
第二十八条 裁判所は、人事に関する訴えが提起された場合における利害関係人であって、父が死亡した後に認知の訴えが提起された場合におけるその子その他の相当と認められるものとして最高裁判所規則で定めるものに対し、訴訟が係属したことを通知するものとする。ただし、訴訟記録上その利害関係人の氏名及び住所又は居所が判明している場合に限る。

死後認知の訴えの当事者は検察官とされているので、この判決が確定した場合に相続人が再審を請求することができるのかが争われた事案について最高裁判所は次のようにできないと判断しました。

検察官を相手方とする認知の訴えにおいて認知を求められた父の子は、右訴えの確定判決に対する再審の訴えの原告適格を有するものではないと解するのが相当である。
けだし、民訴法に規定する再審の訴えは、確定判決の取消し及び右確定判決に係る請求の再審理を目的とする一連の手続であって(民訴法四二七条、四二八条)、再審の訴えの原告は確定判決の本案についても訴訟行為をなしうることが前提となるところ、認知を求められた父の子は認知の訴えの当事者適格を有せず(人事訴訟
手続法三二条二項、二条三項)、右訴えに補助参加をすることができるにすぎず、独立して訴訟行為をすることができないからである。なるほど、認知の訴えに関する判決の効力は認知を求められた父の子にも及ぶが(同法三二条一項、一八条一項)、父を相手方とする認知の訴えにおいて、その子が自己の責に帰することができない事由により訴訟に参加する機会を与えられなかったとしても、その故に認知請求を認容する判決が違法となり、又はその子が当然に再審の訴えの原告適格を有するものと解すべき理由はなく、この理は、父が死亡したために検察官が右訴えの相手方となる場合においても変わるものではないのである。
検察官が被告となる人事訴訟手続においては、真実の発見のために利害関係を有する者に補助参加の機会を与えることが望ましいことはいうまでもないが、右訴訟参加の機会を与えることなしにされた検察官の訴訟行為に瑕疵があることにはならず、前示当審判例は、第三者が再審の訴えの原告適格を有する余地のあることを判示したものと解すべきものではなく、更に、行政事件訴訟とは対象とする法律関係を異にし、再審の訴えをもって不服申立をすることが許される第三者には共同訴訟参加に準じた訴訟参加を許す旨の行政事件訴訟法二二条のような特別の規定のない人事訴訟手続に、行政事件訴訟法三四条の第三者の再審の訴えに関する規定を類推適用することはできない。
三 そうすると、本件確定判決中認知請求に関する被上告人らの再審の訴えを許容した原判決には、再審の訴えの原告適格に関する法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決中右の部分は破棄を免れない。そして、前示のとおり被上告人らの本件再審の訴えは不適法であるから、右請求を棄却した第一審判決を取り消し、被上告人らの訴えを却下すべきものである。

このように相続人が再審の当事者になることはできないとされており、確定した死後認知の訴えの判決を後になって覆そうとしても、かなり難しいです。
なので、最初に死後認知の訴えが提起されましたという裁判所からの通知に応じて、補助参加をおこない、その訴訟の中で主張すべきことを主張することが肝要です。

認知と遺産分割 → 質問4-4

共同相続人の判明と遺産分割 → 質問4-5

死後の人工生殖と親子関係 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

池田市・豊中市・箕面市などの北摂地域や大阪市での相続登記はルピナス司法書士事務所にご相談を

相続した不動産の名義変更にまつわる煩雑な手続きを貴方専任の司法書士がサポートします。
お電話、Eメール、ラインからでも、ご相談いただけます。

友だち追加
ラインでのお問い合わせ