箕面市 Y.T.さん

しばらく前に私の父が亡くなり、母、私、妹の3人で話し合った結果、箕面市内にある土地と建物を私が相続することになりました。
ところが、私が相続登記をしないうちに、母の債権者だという方が法定相続分で登記をして、母の相続分について差し押さえの登記がされています。母は個人で商売をしており、事業資金を借り入れた相手の様です。
まず、第三者が他人の不動産について勝手に法定相続分で登記をするということができるのでしょうか。
また、今回のご相談の不動産は、遺産分割で私が相続することになっているのに私とは関係のない母の債権者が差し押さえるということができるのでしょうか。

司法書士

まず、1つ目のご相談ですが、まったく無関係の第三者が他人の財産をどうこうできることはありませんが、今回のお話については、お母さま個人の財産が、その借金を返済するのに足りないというような一定の場合については、借金の返済を求めるために相続した不動産についてお母さまに代わって法定相続分で登記することはできます。
そして民法は相続登記をしていない場合は、遺産分割で法定相続分より多く相続したことになった部分について第三者については自身の権利を主張できないと定めています。
今回は相続登記をされていないということですので、残念ですがお母さまの法定相続分で登記された持分の差し押さえは有効ということになります。

遺産分割による相続登記の必要性

遺産分割で誰が不動産を相続するのかを決めたとしても、相続登記をしていなければ、第三者に対して権利を主張することができなくなる場合があります。
相続登記の必要性について民法は次のように定めています。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

このように法定相続分を超える部分について権利を主張するためには相続登記が必要であるとされています。
このような規定に法律が改正される前の事件ですが、次のようなものがあります。

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼつてその効力を生ずるものではあるが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいつたん取得した権利につき分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものであるから、不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法一七七条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産につき権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができないものと解するのが相当である。
論旨は、遺産分割の効力も相続放棄の効力と同様に解すべきであるという。しかし、民法九〇九条但書の規定によれば、遺産分割は第三者の権利を害することができないものとされ、その限度で分割の遡及効は制限されているのであつて、その点において、絶対的に遡及効を生ずる相続放棄とは、同一に論じえないものというべきである。
遺産分割についての右規定の趣旨は、相続開始後遺産分割前に相続財産に対し第三者が利害関係を有するにいたることが少なくなく、分割により右第三者の地位を覆えすことは法律関係の安定を害するため、これを保護するよう要請されるというところにあるものと解され、他方、相続放棄については、これが相続開始後短期間にのみ可能であり、かつ、相続財産に対する処分行為があれば放棄は許されなくなるため、右のような第三者の出現を顧慮する余地は比較的乏しいものと考えられるのであつて、両者の効力に差別を設けることにも合理的理由が認められるのである。そして、さらに、遺産分割後においても、分割前の状態における共同相続の外観を信頼して、相続人の持分につき第三者が権利を取得することは、相続放棄の場合に比して、多く予想されるところであつて、このような第三者をも保護すべき要請は、分割前に利害関係を有するにいたつた第三者を保護すべき前示の要請と同様に認められるのであり、したがつて、分割後の第三者に対する関係においては、分割により新たな物権変動を生じたものと同視して、分割につき対抗要件を必要とするものと解する理由があるといわなくてはならない。

最判昭和46年1月26日 民集 第25巻1号90頁

このように法相続分以上の権利を遺産分割によって取得したとしても、それを第三者にも主張できるようにするためには、きちんと相続登記を行うことが重要です。

法定相続分とは → 質問3-1

遺産分割の仕方 → 質問4-2

相続登記ができない場合 → 質問5-1

相続放棄と登記 → 事例紹介

遺贈と登記 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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