孫のことでの相談となります。
私の娘は2度、結婚しては別れるということを繰り返してきました。1度目の結婚の際に設けたのが、その孫です。
孫は1度目の離婚の際に娘が引き取って私と育ていたのですが、、2度目に結婚した際には孫を置いて出て行ってしまったので、私が育てておりました。
ところが娘が結婚して出て行った後1,2年ほどして相手と孫が養子縁組をしたから孫を引き渡せというのです。
我がいうものなんですが、娘はこれまでも奔放に生きてきましたので、このまま孫を渡してしまうことには、心配が尽きません。
どうにかして孫を手元において育てることはできないでしょうか。
お孫さんを手元に置く1つの方法としては監護権を得ることが考えられていました。子供の利益を尊重するのために父母以外に者に監護権を認めることはできないかが主張されていたのですが、近時、最高裁判所はこれを認めませんでした。
なので、残念ながらこの方法は使うことができません。
あとは娘さんとその夫を信じつつ、折々に訪ねていって、お孫さんの様子を伺うしかありません。
その結果、もし親権の行使が不適正であり、親権の喪失・停止要件を充たすようなことがあればその申し立てを行うことになると思われます。
父母以外のものによる監護権の指定はできるのか
父母以外のものによる監護権の指定はできるのかという点について、近時、最高裁判所はできないと判断しました。
事案は次のようなものです。
1 本件は,A(以下「本件子」という。)の祖母である相手方が,本件子の実母である抗告人Y1及び養親である抗告人Y2を相手方として,家事事件手続法別表第2の3の項所定の子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てた事案である。
2 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
(1) 抗告人Y1と前夫は,平成21年▲▲月,本件子をもうけたが,平成22年2月,本件子の親権者を抗告人Y1と定めて離婚した。
(2) 抗告人Y1及び本件子は,平成21年▲▲月,抗告人Y1の母である相手方と相手方宅で同居するようになり,以後,抗告人Y1と相手方が本件子を監護していた。
(3) 抗告人Y1は,平成29年8月頃,本件子を相手方宅に残したまま,相手方宅を出て抗告人Y2と同居するようになり,以後,相手方が単独で本件子を監護している。
(4) 抗告人Y1と抗告人Y2は,平成30年3月に婚姻し,その際,抗告人Y2は,本件子と養子縁組をした。
このような事案において最高裁判所は次のように判断しました。
(1) 民法766条1項前段は,父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者その他の子の監護について必要な事項は,父母が協議をして定めるものとしている。そして,これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。」と規定していることからすれば,同条2項は,同条1項の協議の主体である父母の申立てに
最判令和3年3月29日 民集 第75巻3号952頁
より,家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。
他方,民法その他の法令において,事実上子を監護してきた第三者が,家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく,上記の申立てについて,監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。
なお,子の利益は,子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照),このことは,上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。
以上によれば,民法766条の適用又は類推適用により,上記第三者が上記の申立てをすることができると解することはできず,他にそのように解すべき法令上の根拠も存しない。
したがって,父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。
(2) これを本件についてみると,相手方は,事実上本件子を監護してきた者であるが,本件子の父母ではないから,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできない。
したがって,相手方の本件申立ては,不適法というべきである。
このように法律上は父母以外の第三者を監護者として指定する規定がないことを理由に申し立てが否定されています。
この判断については子供利益を重視する立場から批判的な意見もありますが、当面、この最高裁判所判例が前例となって父母以外の第三者を監護者とすることは認められないと思われます。
しかし、法制審議会では監護権と親権との調整を図る規定を創設しようという動きもあるようですので、将来的には何らかの法改正が行われるかもしれません。
人身保護法による子供の引渡請求 → 事例紹介
特別養子縁組の要件 → 事例紹介
特別養子縁組の再審事由 → 事例紹介
子供引き渡し請求 → 事例紹介
ハーグ条約に基づく子供の返還請求 → 事例紹介
この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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