箕面市 H.K. さん

私は現在、箕面市内に住んでいますが、以前は横浜に住んでいました。横浜にいたころにお付き合いしていたAさんとの間に子供がいるのですが、子供ができた当時Aさんは結婚していたので、子供の親は戸籍上Aさんとその夫との子とされています。私と付き合っているときにはAさんと夫は別居状態だったので、生まれた子供は私の子のはずです。
今回のご相談は、この子のことです。私とAさんはその後不仲になり、分かれることになったのですが、この子もAさんと夫は育てる気が無かったようで、養子に出されてしまいました。戸籍上私は子供の父親ではないので私の同意は必要なく、私に勝手に養子に出されてしまったのです。
近々、特別養子縁組のための手続きが行われるようなのですが、私の子ですので、私が育てたいと思います。どうにかできないでしょうか。

司法書士

そのAさんが産んだ子供が自分の子供であるとすれば、その子を認知することで法律上も親となれますので、特別養子縁組でも親として縁組に同意しないという手段をとることができます。
ただ、戸籍上は他人の子とされていますので、この戸籍上の父親と子との親子関係を否定することから始める必要があります。
そこで、まず、親子関係不存在確認訴訟を提起して、その間に特別養子縁組の審判があれば、異議を申し立てるために即時抗告、場合によっては許可抗告を行うことになります。

特別養子縁組の審判についての再審事由と親子関係不存在確認訴訟の帰趨

子の養子縁組後に血縁上の父が、その子を認知することができないことを理由として、養子縁組後の親子関係不存在確認訴訟が不適法となるのかが争われた事案があります。

子の血縁上の父は、戸籍上の父と子との間に親子関係が存在しないことの確認を求める訴えの利益を有するものと解されるところ、その子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合においては、原則として右訴えの利益は消滅するが、右審判に準再審の事由があると認められるときは、将来、子を認知することが可能になるのであるから、右の訴えの利益は失われないものと解するのが相当である。
これを本件についてみると、記録によれば、被上告人乙山花子を乙山高男、同雪子の特別養子とする審判(以下「本件審判」という。)が確定していることは明らかであるが、上告人は、被上告人花子が出生したことを知った直後から自分が被上告人花子の血縁上の父であると主張し、同被上告人を認知するために調停の申立てを行い、次いで本件訴えを提起していた上、本件審判を行った福島家庭裁判所郡山
支部審判官も、上告人の上申を受けるなどしてこのことを知っていたなどの事情があることがうかがわれる。
右のような事情がある場合においては、上告人について民法八一七条の六ただし書に該当する事由が認められるなどの特段の事情のない限り、特別養子縁組を成立させる審判の申立てについて審理を担当する審判官が、本件訴えの帰すうが定まらないにもかかわらず、被上告人花子を特別養子とする審判をすることは許されないものと解される。
なぜならば、仮に、上告人が被上告人花子の血縁上の父であったとしても、被上告人花子を特別養子とする審判がされたならば、被上告人花子を認知する権利は消滅するものと解さざるを得ないところ(民
法八一七条の九)、上告人が、被上告人花子を認知する権利を現実に行使するためとして本件訴えを提起しているにもかかわらず、右の特段の事情も認められないのに、裁判所が上告人の意思に反して被上告人花子を特別養子とする審判をすることによって、上告人が主張する権利の実現のみちを閉ざすことは、著しく手続的正義に反するものといわざるを得ないからである。
そして、上告人が被上告人花子の血縁上の父であって、右の特段の事情が認められない場合には、特別養子縁組を成立させる審判の申立てについて審理を担当する審判官が本件訴えの帰すうが定まるのを待っていれば、上告人は、被上告人花子を認知した上で、事件当事者たる父として右審判申立事件に関与することができたはずであって、本件審判は、前記のような事情を考慮した適正な手続を執らず、事件
当事者となるべき者に対して手続に関与する機会を与えることなくされたものといわざるを得ないことになる。
そうであれば、上告人が被上告人花子の血縁上の父であって右の特段の事情が認められない場合には、本件審判には、家事審判法七条、非訟事件手続法二五条、民訴法四二九条、四二〇条一項三号の準再審の事由があるものと解するのが相当であって、本件審判が確定したことの一事をもって本件訴えの利益は失われたものとした原審の判断は、法令の解釈を誤り、ひいては審理不尽の違法を犯したものといわざるを得ない。この趣旨をいう論旨は理由があるから、原判決は破棄を免れない。

最判平成7年7月14日 民集 第49巻7号2674頁

このように、子の血縁上の父は、戸籍上の父と子との間に親子関係が存在しないことの確認を求める訴えの利益を有するものと解されるところ、その子を第三者の特別養子とする審判が確定した場合においては、原則として右訴えの利益は消滅するとされています。
しかしこの原則を貫くと、仮に上告人が被上告人花子の血縁上の父であったとしても、被上告人花子を特別養子とする審判がされたならば、被上告人花子を認知する権利は消滅するものと解さざるを得ないところ(民
法八一七条の九)、上告人が、被上告人花子を認知する権利を現実に行使するためとして本件訴えを提起しているにもかかわらず、右の特段の事情も認められないのに、裁判所が上告人の意思に反して被上告人花子を特別養子とする審判をすることによって、上告人が主張する権利の実現のみちを閉ざすことは、著しく手続的正義に反するものといわざるを得ないことを理由として、例外的に、右審判に準再審の事由があると認められるときは、将来、子を認知することが可能になるのであるから、右の訴えの利益は失われないものと解するのが相当であると判断されました。

そこで、今回のご相談においても親子関係不存在確認訴訟を提起しておけば、特別養子縁組の審判があったとしても訴訟は却下とはならずに、真に血縁上の親子関係が無いと認められれば訴訟は認容されることになります。

父母以外の監護者 → 事例紹介

特別養子縁組の要件 → 事例紹介

代諾養子縁組 → 事例紹介

虚偽出生届と養子縁組 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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