池田市 H.C. さん

数年前に私の古くからの友人に遺言の執行者になってくれと頼まれ、遺言書を預かっています。遺言の内容は自分には子供もいないので「全財産を公共に寄付する」というものでした。友人は池田市内に土地と建物を持っており、そこに暮らしていましたが、相続する人もいないので預貯金も含めて、どこか公益的な団体に贈ってほしいということでした。
そして、今年になってから亡くなったのですが、どこに寄付しようかと考えながらその池田市内の不動産の掃除などをしておりましたら、友人の相続人を名乗る方たちが来て、自分たちが相続することになったから、今後は管理する必要はないと言われました。
私は遺言のことを伝えたのですが、仮に遺言があったとしても「公共に寄付する」などといった漠然とした遺言は無効だと言っています。
なるべく友人の遺言を実現してあげたいのですが、私はどうすればいいのでしょうか。

司法書士

たとえ遺言の内容が「公共に寄付する」という、やや漠然としたものであったとしても、そのことだけで遺言は無効だということにはなりません。
遺言執行者が指定されている場合は、「公共に寄付する」という遺言を実現するために、自治体に寄付するのか公益団体に寄付するのかといったことを決めることまでも委ねるものと考えられるからです。
ただ、その相続人を名乗られている方が実際に相続人であって、池田市内の不動産について相続登記がなされていたりすると、遺言執行者であったとしても、その相続登記を無効とすることはできません。
なので、ご友人の遺志を実現してあげたいのであれば、まずは家庭裁判所に行って遺言の検認を受けたうえで、相続登記などがされる前に速やかに寄付を行う必要があります。

「公共に寄付する」ことを遺言執行者に託した遺言の効力

「公共に寄付する」という内容で、その実現のために遺言執行者が選定されていたという遺言の効力が争われた事案があります。
遺言の内容として「公共に寄付する」というだけでは誰が相続財産を受け取るのかが定かでないため、遺言は無効なのではないかが争われました。

遺言の解釈に当たっては、遺言書に表明されている遺言者の意思を尊重して合理的にその趣旨を解釈すべきであるが、可能な限りこれを有効となるように解釈することが右意思に沿うゆえんであり、そのためには、遺言書の文言を前提にしながらも、遺言者が遺言書作成に至った経緯及びその置かれた状況等を考慮することも許されるものというべきである。
このような見地から考えると、本件遺言書の文言全体の趣旨及び同遺言書作成時のDの置かれた状況からすると、同人としては、自らの遺産を上告人ら法定相続人に取得させず、これをすべて公益目的のために役立てたいという意思を有していたことが明らかである。
そして、本件遺言書において、あえて遺産を「公共に寄與する」として、遺産の帰属すべき主体を明示することなく、遺産が公共のために利用されるべき旨の文言を用いていることからすると、本件遺言は、右目的を達成することのできる団体等(原判決の挙げる国・地方公共団体をその典型とし、民法三四条に基づく公益法人あるいは特別法に基づく学校法人、社会福祉法人等をも含む。)にその遺産の全部を包括遺贈する趣旨であると解するのが相当である。
また、本件遺言に先立ち、本件遺言執行者指定の遺言書を作成してこれを被上告人に託した上、本件遺言のために被上告人に再度の来宅を求めたという前示の経緯をも併せ考慮すると、本件遺言執行者指定の遺言及びこれを前提にした本件遺言は、遺言執行者に指定した被上告人に右団体等の中から受遺者と
して特定のものを選定することをゆだねる趣旨を含むものと解するのが相当である。
このように解すれば、遺言者であるDの意思に沿うことになり、受遺者の特定にも欠けるところはない。
そして、前示の趣旨の本件遺言は、本件遺言執行者指定の遺言と併せれば、遺言者自らが具体的な受遺者を指定せず、その選定を遺言執行者に委託する内容を含むことになるが、遺言者にとって、このような遺言をする必要性のあることは否定できないところ、本件においては、遺産の利用目的が公益目的に限定されている上、被選定者の範囲も前記の団体等に限定され、そのいずれが受遺者として選定されて
も遺言者の意思と離れることはなく、したがって、選定者における選定権濫用の危険も認められないのであるから、本件遺言は、その効力を否定するいわれはないものというべきである。

最判平成5年1月19日 民集 第47巻1号1頁

このように最高裁判所の判例でも「公共に寄与する」という遺言でも受遺者の特定に欠けるものではなく、遺言執行者に受遺者の選定をゆだねる趣旨であると判断されていますので、ご相談においても遺言が無効にされることは無いと思われます。
ただ、この判決の当時と異なり、現在では遺言執行者の権限がやや弱められており、遺言があったとしても、遺言執行者がその遺言を早く実現しないと、相続人による相続登記が優先することがあります。
なので、ご友人の遺志を実現した挙げたいのであれば速やかに遺言を実行してあげることが必要です。

公正証書遺言の証人適格 → 事例紹介

共同遺言の有効性 → 事例紹介

不明確な遺言の解釈 → 事例紹介

負担付死因贈与の撤回 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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