豊中市 O.E.さん

私は現在、2人の子供と豊中市内で暮らしています。
子供2人とと言いましたが、実は私には夫との間に3人の子供がいます。
ただ、夫は3人目の子が自分の子ではないと言い出して、この子を養子に出すと言って聞きません。私の両親も交えて話し合った結果、一度は養子に出すということに合意したのですが、この決断は間違っていたと思えてなりません。
今回、特別養子縁組を行ったのですが、相手のご夫妻からは今さら子供を返してくれと言われても私の経済事情などから「あなた一人では育てられないのだから、あなたの同意は必要ない」とも言われています。
同意を取り消して子供を取り戻すことはできないのでしょうか。

司法書士

特別養子縁組では養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合には父母の同意は必要ないとされていることから、相手のご夫妻も同意は必要ないと言っているものと思われます。
また、そもそも特別養子縁組を行うには父母による養子となる者の監護が著しく困難な事情がある場合に認められるので、経済事情により育てられないと言われたというのは監護ができないと言っているのだと思います。
ただ、現状、裁判所はいずれの要件に関しても厳格に判断しているようで、単に経済事情が悪いというだけでは、縁組先のご夫婦のいうようなことにはならないと考えられています。

特別養子縁組の要件

特別養子縁組を行うためには「父母による養子となる者の監護が著しく困難な事情」が認められることが必要です(民法817条の6の但書)。また原則として父母の同意が必要とされますが、例外的に「養子となる者の利益を著しく害する事由がある」場合には父母の同意も不要とされます(民法817条の6の但書)。
これらの要件がどういう場合にみたされると考えるのかという点について判断した裁判例があります。
そこではまず民法817条の6の但書について次のように判断されました。

(1)養子縁組の成立には,原則として養子となる者の父母の同意を要することとした趣旨は,特別養子縁組が成立すれば,特別養子となった子とその父母との法的親子関係は終了し(民法817条の9),養親がその子の唯一の父母となり,子及びその父母の法律上及び事実上の地位に重大な変更が生ずることから,子及びその父母の利益を保護することにあると解される。
したがって,民法817条の6の但書にいう「その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合」と
は,父母に虐待,悪意の遺棄に比肩するような事情がある場合,すなわち,父母の存在自体が子の利益を著しく害する場合をいうものと解すべきであり,原審が説示するところの,安定した監護環境を用意せず,かつ明確な将来計画を示せないまま,将来の事件本人の引取りを求めることをもって直ちに,上記但書の事由に当たるものと結論付けることはできないというべきである。

東京高決 平成14年12月16日 家月55巻6号112頁

また、民法817条の6の但書については次のように判断しています。

(2)また,民法817条の7は, 「特別養子縁組は,父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において,子の利益のため特に必要があると認めるときに,これを成立させるものとする。」と規定しているところ,ここにいう「父母による養子となる者の監護が著しく困難」である場合とは,貧困その他客観的な事情によって子の適切な監護ができない場合をいい,また「不適当である場合」とは,父母による虐待や著しく偏った養育をしている場合を指し,「その他特別の事情がある場合」とは,これらに準じる事情のある場合をいうものと解すべきである。
したがって,原審が説示するところの,安定した監護環境を用意せず,かつ明確な将来計画を示せないまま,将来の事件本人の引取りを求めることが,上記必要性の要件を満たしているということはできない。
かえって,一件記録によれば,抗告人は,現在長女及び二女を監護養育しており,今後実家に転居した上で,実父母等の援助を受けることができる可能性も否定し得ないこと,抗告人は,原審判後の平成14年10月11日,熊本家庭裁判所に戸籍上の父と事件本人の親子関係不存在確認の調停を申し立てており,時間の経過はあるにしても,現在法的手続を進めていること,今後の同調停事件等の推移いかんによっては,本件にも重大な影響が生ずるおそれがあること,抗告人は,原審において一貫して事件本人を監護養育する意思があることを表明していることが認められるのであって,これらの事実によれば,本件において上記必要性の要件が満たされていると判断するには蹟持せざるを得ない。したがって,この点につき更に審理を尽くす必要がある。

このように単に「安定した監護環境を用意せず,かつ明確な将来計画を示せない」ことは上記要件にはあたらないとされています。
しかし、この裁判の差戻審では次のように判断されているため、さらに考慮すべき事情もあります。

実母の事件本人に対する愛情に欠けるところはないとしても,養育環境を整備しようとする意欲は十分でなく,現に,監護養育の客観的態勢は末だ調っていないし,その整備には,なお,相当の時間を要する状態にあるから,現在の安定した生活環境から事件本人を離脱させて,実母がこれを引き取ることにしても,そのこと自体が事件本人の福祉に照らして極めて重大な影響を及ぼすものであるばかりか,現在の実母の生活環境が未整備である以上,実母が事件本人との円満な親子関係を形成することは著しく困難であると考えざるを得ない。
そうであれば,実母による虐待や悪意の遺棄があるとは認められないとしても,実母の監護のもとに置くことは,もはや,事件本人の幸福の観点から著しく不当であって,その健全な成長の著しい妨げとなるも
のと認められる。したがって,民法817条の6但書の事由があると認めるのが相当である。

長野家庭裁判所松本支部 平成15年(秦)第11号

このように「養育環境を整備しようとする意欲は十分でなく,現に,監護養育の客観的態勢は末だ調っていない」ことが考慮事情とされている以上、今回のご相談においてもなるべく具体的な監護状況を説明する必要があると思われます。

虚偽出生届と養子縁組 → 事例紹介

代諾養子縁組 → 事例紹介

節税目的の養子縁組 → 事例紹介

特別養子縁組の再審事由 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

池田市・豊中市・箕面市などの北摂地域や大阪市での相続登記はルピナス司法書士事務所にご相談を

相続した不動産の名義変更にまつわる煩雑な手続きを貴方専任の司法書士がサポートします。
お電話、Eメール、ラインからでも、ご相談いただけます。

友だち追加
ラインでのお問い合わせ