箕面市 O.C.さん

私と夫は結婚してから数年、子供に恵まれませんでしたので知人の子供を貰うことにしました。その際、養子縁組をするのではなく、私たち夫婦の実子として出生届を提出しました。
私たち家族は箕面市内の一軒家で暮らしていたのですが昨年、夫が亡くなると子供に追い出される形で家を出なくてはならなくなりました。息子が私たちの実子ではないことに気づいてからはあまりいい関係ではなかったのですが、追い出されるとは思いませんでした。それから何度も話し合おうとしたのですが、そのうち合ってもくれなくなくなりました。
夫の死後、箕面市の土地と建物について相続登記がされており、息子が2分の1の持ち分を持つことになっています。
息子との関係が改善せず、これ以上親子として暮らすことはできません。親子関係を解消して夫が残してくれた家に戻りたいのですが、できるでしょうか。

息子さんとしては親子関係を解消されないために、たとえ出生届が虚偽のものであったとしても、養子縁組がされのと同じであるので、親子関係は解消されないと主張してくることが考えられます。
しかし、虚偽の出生届をもって養子縁組届がされたものとみなすことはできないと考えられていますので、この主張は裁判所に受け入れられないとは思われます。
ただし、息子さんを受け入れてから何十年も経っていますので、今更、親子関係が無いと言われる息子さんの身に立つと、親子関係の解消は権利の濫用にあたると判断されることもないとは言い切れません。
もう一度、誰か息子さんが心を開いている方を通して、なんとか話し合いの場を持つ方法を探してみてはどうでしょうか。

虚偽の出生届と養子縁組の成否

嫡出子出生届が虚偽であった場合に、その届を養子縁組届として認めることはできないかが争われた事案があります。
通常、このようなことは子供が嬰児の時に行われるので、子供が虚偽の出生届に関与することは考えられません。にもかかわらず、出生届が虚偽であったことだけで親子関係の解消を認めてよいのかが問題とされたのです。
しかし、最高裁判所は養子縁組届をみなすことを否定しました。

原審の適法に確定したところによれば、被上告人とその夫Dは、大正一一年一月ころ訴外E・F夫婦間の子として出生した上告人を同年三月一三日引き取つて実子同様に養育し、Dから戸籍上の届出手続の依頼を受けた訴外某が同年九月二二日上告人をD・被上告人間の嫡出子として出生届をして、それが受理されたというのである。
所論は、右の場合には嫡出子出生届は養子縁組届として有効と解すべきであるというが、右届出当時施行の民法八四七条、七七五条によれば、養子縁組届は法定の届出によつて効力を生ずるものであり、嫡出子出生届をもつて養子縁組届とみなすことは許されないと解すべきである(最高裁昭和二五年一二月二八日第二小法廷判決・民集四巻一三号七〇一頁参照)。

最判昭和50年4月8日 民集 第29巻4号401頁

このように最高裁判所は養子とする意図で他人の子を嫡出子として出生届をしても、右出生届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできないと判断しました。

しかし、その後、親子関係が継続してきた期間や、その間の関係性などを考慮して、親子関係の不存在を主張することが権利の濫用にあたる場合があるということを最高裁判所も認めています。
なので、今回のご相談でも、養子縁組が成立しないとしても、そのことを主張することが場合によっては権利の濫用して排除されることもあり得ます。

特別養子縁組の再審事由 → 事例紹介

無効な養子縁組の追認 → 事例紹介

節税目的の養子縁組 → 事例紹介

特別養子縁組の要件 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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