豊中市 K.C.さん

私の父が先日亡くなったのですが、豊中市内の土地と不動産をわたしと妹に相続させるとの遺言を残していました。
父は生前に脳梗塞を患っており、手が不自由でしたので力が思うように入らなかったことからカーボン紙で複写するようにして遺言を残していました。
けれど、不動産を相続できなった弟が遺言は偽造されたものだとか、自分で書かないといけないのにカーボン紙を用いているので無効だとか言ってきます。
父の遺言は無効なのでしょうか。

司法書士

確かに自筆証書遺言については本文を自書しなければならないとされています。
しかし、遺言は亡くなれた方の最後に残された意思ですので、なるべくこれを尊重しようという観点から遺言の方式性についてはある程度、緩和して判断しても良いのではないかという考え方が主流となっています。
最高裁判所でも次に説明するようにカーボン紙による複写であるという点だけから遺言を無効とすることはされていませんので、ご相談においてもお父様の遺言は有効と判断される可能性が高いと思われます。

カーボン紙での複写による遺言の自書性

民法は次のように自筆証書遺言については財産目録部分を除いて、自身の手で書く必要があると定めています。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。

そこで、カーボン紙での複写による場合にはこの自書性が充たされるのかが争われた事案がありました。
遺言者の最後の意思を尊重したほうが良いという考え方から、遺言の方式に関してはある程度緩和して判断しても良いとされており、最高裁判所も基本的にはそのような考えによって具体的な事案について判断しています。

原審の適法に確定した事実によると、本件遺言書は、Dが遺言の全文、日付及び氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載したものであるというのであるが、カーボン紙を用いることも自書の方法として許されないものではないから、本件遺言書は、民法九六八条一項の自書の要件に欠けるところはない。これと同旨の原審の
判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

最判平成5年10月19日 集民 第170号77頁

この事案では遺言書を偽造する動機の有無や、遺言書が入れられていた封筒の封印状況(実印による封印がなされていたか)など、いろいろな要素も加味して遺言書の有効性が認められています。
なので、カーボン紙での複写による遺言書が単に認められるというわけではなく、複数の要素を考慮して遺言の有効性が判断されます。
ご相談では相談者と妹さんはお父様と生前同居して世話をしていたということでもあり、そのお礼として弟さんとは相続分に差をつけるということも十分にあり得ますので、相続分に差があるとして一概に遺言書が偽造されたとも考えられません。
このようなことも加味しますと遺言は有効であると判断される可能性が高いのではないかと思われます。

遺言書の署名と押印 → 事例紹介

公正証書遺言の証人適格 → 事例紹介

共同遺言の有効性 → 事例紹介

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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