私は豊中市で生まれ育ち、大学卒業後は大阪市内の会社に勤めています。
私は当時お付き合いをしていた同性の方と結婚したかったのですが、現状では同性婚が認められていなかったこともあり、事実婚という形で一緒に暮らしていました。
彼女は子供が欲しかったようでして、話し合いの結果、精子提供を受けて子供を育てることになりました。
しかし、あろうことか、彼女は精子提供を受けるはずの男性が好きになったので私と別れると言い出しました。そして私との事実婚を解消して、その男性のもとへ出ていったのです。
もう彼女とやり直す気はないのですが、せめて慰謝料だけでも請求することはできないでしょうか。
事実婚の状況にもよりますが、お2人が真摯に結婚生活を送ろうとしていたのであれば、それを一方的に破棄することは不法行為を構成しますので、慰謝料の請求も認められることがあります。
同棲カップルの事実婚を一方的に破棄した場合の不法行為の成立の可否
同棲カップルの事実婚であったとしても、その事実婚の状況次第で不法行為が成立すると判断された事例があります。
3 争点1(権利又は法律上保護される利益の有無)について認定事実によれば,控訴人及び被控訴人は,①平成21年3月から交際を開始し,平成22年2月から平成29年1月まで約7年間にわたり同居していたこと,②その間の平成26年12月には同性婚が法律上認められている米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得して結婚式を行った上,平成27年5月には日本国内で結婚式を挙げ,披露宴も開催し,その関係を周囲の親しい人(一部の親族も含む。)に明らかにしていたこと,③その後,2人で子を育てることを計画し,控訴人は,平成27年7月頃から,2人で育てる子を妊娠すべく,第三者からの精子提供を受けるなどし,被控訴人は,平成28年12月までには,控訴人と将来的には子をもうけて育てる場所としてマンションの購入を進めていたことが認められる。
東京高判令和2年3月4日 令和1(ネ)4433
以上の事実に照らすと,控訴人及び被控訴人の上記関係(以下「本件関係」という。)は,他人同士が生活を共にする単なる同居ではなく,同性同士であるために法律上の婚姻の届出はできないものの,できる限り社会観念上夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていたものであり,平成28年12月当時,男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあったということができる。
したがって,控訴人及び被控訴人は,少なくとも民法上の不法行為に関して,互いに,婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有するものというべきである。
この点,控訴人は,同性の夫婦関係又は内縁関係については,貞操義務が生じたり,法的保護に値したりする段階にはなく,同性婚の問題は立法によって解決すべき問題であり,また,どこまで同性カップルに法的保護を与えるか基準が不明確である上,さらに,控訴人と被控訴人との生活実態(生活費はお互いに負担し合う関係にあった。)からして,同性同士のカップルにすぎず,両者が同性同士の夫婦関係又は内縁関係にあったとは認められないから,被控訴人には「他人の権利又は法律上保護される利益」は認められない旨主張する。
しかしながら,そもそも同性同士のカップルにおいても,両者間の合意により,婚姻関係にある夫婦と同様の貞操義務等を負うこと自体は許容されるものと解される上,世界的にみれば,令和元年5月時点において,同性同士のカップルにつき,同性婚を認める国・地域が25を超えており,これに加えて登録パートナーシップ等の関係を公的に認証する制度を採用する国・地域は世界中の約20%に上っており(乙3),日本国内においても,このようなパートナーシップ制度を採用する地方自治体が現れてきている(甲12,13)といった近時の社会情勢等を併せ考慮すれば,控訴人及び被控訴人の本件関係が同性同士のものであることのみをもって,被控訴人が前記 のような法律上保護される利益を有することを否定することはできない。また,控訴人及び被控訴人は,前記 のとおり,単に交際及び同居をしていたのではなく,米国ニューヨーク州で婚姻登録証明書を取得して結婚式を行った上,日本においても結婚式等を行い,周囲の親しい人にその関係を周知し,2人で子を育てることも計画して現にその準備を進めていたのであるから,控訴人が被控訴人に従属する関係にあったとはいえないし,控訴人の指摘するように控訴人及び被控訴人が生活費を互いに負担し合う関係にあった点のみをもって,平成28年12月当時,前記のような婚姻に準ずる関係にあったとの認定を左右するものではない。控訴人の上記主張は採用できない。
4 争点2(控訴人が故意又は過失により被控訴人の権利又は法律上保護される利益を侵害したか否か)について
前記のとおり,控訴人及び被控訴人は,互いに,婚姻に準ずる関係から生じる法律上保護される利益を有していることからすれば,控訴人が被控訴人以外の者と性的関係を結んだことにより,本件関係の解消をやむなくされた場合,被控訴人は,被控訴人の有する不法行為に関して法律上保護される利益が侵害されたものとして,控訴人に対し,その損害の賠償を求めることができると解すべきである。
そして,前提事実及び認定事実によれば,①被控訴人と本件関係にあった控訴人は,流産後の術後検診に付き添わなかった被控訴人の態度(認定事実⑶)等から,被控訴人から家族として扱われていないと悲しい気持ちとなり,被控訴人の態度を不誠実だと感じながらも,被控訴人に対して本件関係の解消を求めるなどの行動に及ぶことはなく,平成28年の年末時点でも,仮に子を授かれば,その子を被控訴人と共に育てる意向を有していたこと,②平成28年11月には,控訴人と被控訴人は,将来的に子をもうけ,育てる場所として,マンションの内見に行っていること,③平成28年の年末時点においても,被控訴人は,控訴人が1審相被告と人工授精を行うものと信頼して,控訴人が1審相被告の下に行くことを認めたこと,④ところが,控訴人は,平成28年10月の流産後,平成28年12月28日から平成29年1月3日にかけて1審相被告宅に宿泊したときまでの間に,1審相被告との間で複数回にわたりペッティング(挿入を伴わない性行為)に及んだこと(このことは,平成29年1月3日の控訴人の発言内容及び同月4日の3人での話合いの内容(認定事実⑹)等を総合すれば,推認することができる。),⑤控訴人は,平成29年1月4日に被控訴人が控訴人と1審相被告の関係を知った後も,1審相被告に対して連絡を取らないことを約束して被控訴人との同居を継続した(認定事実⑹)が,結局,被控訴人に対し,1審相被告が好きであると伝え,同月27日,被控訴人と別居を開始し(認定事実⑺),同年12月,被控訴人との間で,米国においてされた婚姻を解消することを合意し,
相互に必要な協力をし,当該婚姻の解消手続をとるものとする旨の調停に代わる審判を受けたこと(前提事実⑹)が認められる。
以上によれば,被控訴人は,控訴人が1審相被告と故意に性的関係を結んだことにより,本件関係の解消をやむなくされたものと認めることができる。
したがって,被控訴人は,控訴人に対し,控訴人が1審相被告と性的関係を結んだことにより,婚姻に準ずる関係である本件関係の解消をやむなくされたことを理由にその損害の賠償を求めることができるというべきである。
このような事例と類似する状況にあるのであれば、今回のご相談においても慰謝料の請求が認められる可能性はあると思われます。
この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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