池田市 K.O.さん

私はある男性と10年来、いわゆる内縁関係を持っていました。その方は私とお付き合いをする前に結婚はしていたのですが、その前妻は既に無くなっています、
ただ、子供さんがおられるので私との結婚をためらっていまして、内縁という関係を続けておりました。
その彼が先日、病気で亡くなりました。
彼は生前、池田市内で事業をおこなっており、わたしも内助の功として彼に貢献してきたつもりです。そこで、彼の財産を相続した子供に対して財産分与を求めたいのですが、このような請求は認められるでしょうか。

司法書士

残念ながら、正式に結婚していない内縁関係においては死別の場合の財産分与は認められていませんので、「財産分与」として財産の分割を請求することはできません。
ただ、亡くなられた方の財産形成に寄与しているのであれば、その程度にはよりますが、共有権の分割や不当利得などによって清算することは可能とされていますので、その方向での財産の分割請求を考えていくことになります。

内縁関係にあった者が亡くなった場合の財産分与の可否についての判例

婚姻届けを提出せずに内縁関係にとどまっている状況で、その相手方が亡くなってしまった場合に、財産分与が認められるのかについて、最高裁判所は次のように判断しました。

【要旨】内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、法律上の夫婦の離婚に伴う財産分与に関する民法七六八条の規定を類推適用することはできないと解するのが相当である。
民法は、法律上の夫婦の婚姻解消時における財産関係の清算及び婚姻解消後の扶養については、離婚による解消と当事者の一方の死亡による解消とを区別し、前者の場合には財産分与の方法を用意し、後者の場合には相
続により財産を承継させることでこれを処理するものとしている。このことにかんがみると、内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得るとしても、死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところである。また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となってその相続人に承継されると解する余地もない。
したがって、生存内縁配偶者が死亡内縁配偶者の相続人に対して清算的要素及び扶養的要素を含む財産分与請求権を有するものと解することはできないといわざるを得ない。

最判平成12年3月10日 民集 第54巻3号1040頁

婚姻(内縁)が解消したさいの財産の分配については、現行民法は財産分与と相続を分けていると考えると、死別の場合に相続ではなく財産分与も適用してしまうと両者に関して民法が想定している制度の体系を崩すものとなって妥当ではないという判断が上記最高裁判所の考え方の背景にあると言われています。

ただ、何にせよ最高裁判所が内縁関係の死別による解消につき、財産分与の規定は適用されないと明言している以上、今回のご相談でも財産分与は認められない可能性が高く、別の手段を講じる必要があります。

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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