私の娘はある男性と内縁関係にありました。相手の家は商売をされていたようで娘は相手先の実家で家業を手伝いながら結婚の日を待っていたのですが、義母と折り合いが悪く、ことあるごとに嫌がらせを受けていたようです。
そのなかで、相手の男性も母親に同調するばかりで娘を思いやってはくれず、挙句の果てに娘の方を非難するようになったので耐え切れずに私どもが住む箕面市の実家に戻ってきました。
その後、その相手先での無理な労働が祟ってしばらく入院することになったのですが、相手からは荷物を引き取るようにとの手紙が届き、結婚もなしにするとのことでした。
娘はあんなに疲れ果てるまで相手の家に尽くしたにも関わらず、捨てられるなんて不憫でなりません。
娘も相手方に慰謝料や入院にかかった医療費などを請求したいと言っているのですが、正式に結婚していたわけではないので、これらの請求は認められるのでしょうか。
内縁関係であっても正式な婚姻に準じる関係と認められることもあり、婚姻費用の分担を請求することもできます。
ご相談の入院にかかった医療費も婚姻費用に含まれますので、内縁関係の不当破棄によっても請求が認められます。
内縁関係の性質と不当破棄についての判例
内縁関係とはどのような関係なのか、婚姻関係とどの程度相違するのか、内縁関係を不当に破棄された場合にどのような救済が行われるのかについて最高裁判所は次のように判断しています。
まず、不法行為で保護される法的な利益が内縁関係にも認められるのかについての判断です。
大審院は、いわゆる内縁を「将来ニ於テ適法ナル婚姻ヲ為スベキコトヲ目的トスル契約」すなわち婚姻の予約であるとし、当事者の一方が正当の理由なく、約に違反して婚姻をすることを拒絶した場合には、其の一方は相手方に対し、婚姻予約不履行による損害賠償の義務を負う旨判示し(大審院大正二年(オ)第六二一号、同
最判昭和33年4月11日 民集 第12巻5号789頁
四年一月二六日民事連合部判決、民事判決録四九頁)、爾来裁判所は、内縁を不当に破棄した者の責任を婚姻予約不履行の理論によつて処理し来り、当裁判所においても、この理論を踏襲した判例の存することは、論旨の指摘するとおりである。
ところで、いわゆる内縁は、婚姻の届出を欠くがゆえに、法律上の婚姻ということはできないが、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合であるという点においては、婚姻関係と異るものではなく、これを婚姻に準ずる関係というを妨げない。そして民法七〇九条にいう「権利」は、厳密な意味で権利と云えなくても、法律上保護せらるべき利益があれば足りるとされるのであり(大審院大正一四年(オ)第六二五号、同年一一月二八日判決、民事判例集四巻六七〇頁、昭和六年(オ)第二七七一号、同七年一〇月六日判決、民事判例集一一巻二〇二三頁参照)、内縁も保護せられるべき生活関係に外ならないのであるから、内縁が正当の理由なく破棄された場合には、故意又は過失により権利が侵害されたものとして、不法行為の責任を肯定することができるのである。
されば、内縁を不当に破棄された者は、相手方に対し婚姻予約の不履行を理由として損害賠償を求めることができるとともに、不法行為を理由として損害賠償を求めることもできるものといわなければならない。
本件において、原審は、、上告人の行為は所論の如く不法行為を構成するものと認めたものであるが、上記説明に徴すれば、これをもつて違法とすることはできない。論旨は採るをえない。
次に婚姻関係にある者について認められている婚姻費用の分担請求権が内縁関係にも適用されるのかについても判断しました。
本件当事者間の内縁関係は昭和二八年三月二一日上告人の一方的意思によつて破棄されたこと、被上告人は上告人と別居するにいたつた昭和二七年六月二日から昭和二八年三月三一日までの間に、自己の医療費として合計二一四、一三〇円を支出したことは、いずれも原審の確定したところである。
そして、内縁が法律上の婚姻に準ずる関係と認むべきであること前記説明の如くである以上、民法七六〇条の規定は、内縁に準用されるものと解すべきであり、従つて、前記被上告人の支出した医療費は、別居中に生じたものであるけれども、なお、婚姻から生ずる費用に準じ、同条の趣旨に従い、上告人においてこれを分担すべきものといわなければならない。
そして、原判文の全趣旨に照らすと、原審は、本件当事者間における一切の事情を考慮した上、本件内縁関係が破棄せられるまでの間に、被上告人の支出した医療費のうち金二〇〇、〇〇〇円を上告人において分担すべきものと判断したことを肯認することができるのであつて、原判決には所論の如き理由そごの違法はなく、所論は採るをえない。
このように最高裁判所は内縁関係も婚姻関係に準じる関係であるので、民法760条が定めている婚姻費用の分担請求権も内縁関係に適用されるとしています。
どのような関係であれば内縁関係と認められるのか
どのような関係であれば内縁関係と認められるのかについては一定期間継続して同居していたり、性的な関係にあるといった生活上の協力関係があれば認められやすいと考えられています。
しかし、例えば同居期間がないもしくは短いといった理由で内縁関係と認められなくとも婚約は成立することこともあり、婚約の不当破棄についても損害賠償等が認めらます。
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