私の父は箕面市内で服の卸業を個人で手掛けていました。
父は生前、配達中に交通事故にあい、運んでいた商品や車などの損害賠償金の支払いなどの和解が成立していました。
ただ、賠償金は分割で支払われることになっていたのですが、すべて支払ってもらう前に父が亡くなり、私たち残された家族が相続することになりました。
そこで、父が亡くなった旨を伝えて、私が相続しているはずの賠償金の一部を事故の相手方に請求したのですが、その相手方からは遺産分割が済んで、誰が相続することになったのかを確定してから請求してくれと言われるだけで、支払ってはもらえませんでした。
このような損害賠償についても遺産分割の対象となるのでしょうか。
相続財産中に金銭債権がある場合には、その金銭債権は法定相続分によって当然に分割して相続されるものと考えられています。
なので、ご相談の場合でもお父様が亡くなられた時点で、損害賠償債権は法定相続分に応じて分割して各相続人に帰属することになるので、自身の法定相続分の限度で、事故の相手方に請求することができます。
金銭債権が相続財産中にある場合の相続人への帰属
被相続人が他者に対して金銭債権を有している場合に、その債権を回収する前に亡くなったときは、その債権は遺産分割の対象となるのか、それとも法定相続分に応じて各相続人に遺産分割を経ずに帰属するのかという問題について最高裁判所は次のように考えています。
相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする
最判昭和29年4月8日 民集 第8巻4号819頁
相続財産中に債権がある場合、相続によってこの債権は相続人で準共有することになります。
そしてこの準共有された債権は多数当事者間の債権関係となります。
ここで準共有された債権が可分債権である場合には、多数当事者間の債権関係に関する民法427条が適用されて、法律上当然に分割債権となって各相続人に帰属することになります。
そこで、その相続人に帰属した分割債権を各自が行使できることになります。
最高裁判所は、このように考えることで、上記のように「相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する」と判断したものと考えられています。
この判断によると、ご相談の場合でも損害賠償請求権は金銭債権であるので、当然に法定相続分に応じて分割されることになります。
従いまして、遺産分割協議の対象にはならずに、法定相続分の限度で各相続人が支払いを求めることができます。
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この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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