池田市 K.C.さん

わたしの父が亡くなり、父と同居していた姉が池田市内の不動産や現金などを管理しています。
現金だけでも数百万円はあると思うのですが、姉は大雑把な性格なので、このまま姉の手元に置いておくことが不安でした。
そこで、私の法定相続分だけでもいいので、現金の一部を私に渡してもらいたいと考えているのですが、渡してもらえるのでしょうか。

司法書士

残念ながら現金は遺産分割によって、その所有が決められるものとされいますので、たとえ法定相続分の範囲であっても、実際に現金を管理している相続人に対して自分の持ち分を引き渡せと主張することはできません。
なので、管理に不安があるということでしたら、早めの遺産分割協議をお姉さまと行うべきです。
遺産分割が話し合いで纏まらない場合は、裁判所で調停や審判を利用することもできます。

遺産分割前の遺産である現金に対する相続人の権利

遺産に現金が含まれている場合に、その現金の取り扱いに関して最高裁判所の判例は次のように考えています。

判例の事案は、被相続人が多額の現金を残して亡くなったが、その現金を相続人の1人だけが管理していたので、その他の相続人が法定相続分に応じた支払いを求めたというものです。

相続人は、遺産の分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできないと解するのが相当である。上告人らは、上告人ら及び被上告人がいずれも亡Dの相続人であるとして、その遺産分割前に、相続開始時にあった相続財産た
る金銭を相続財産として保管中の被上告人に対し、右金銭のうち自己の相続分に相当する金銭の支払を求めているところ、上告人らの本訴請求を失当であるとした原審の判断は正当であって、その過程に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

最判平成4年4月10日 集民 第164号285頁

預貯金債権以外の金銭債権は法定相続分に応じて自動的に分割されますが、現金や預貯金債権は遺産分割手続きにおける調整役として使い勝手が良いことなどから、当然に法定相続分に応じた分割はなされずに、遺産分割手続きの中で分割が行われるものとしたと考えられています。
この最高裁判所の判例により、現金は法定相続分に応じて当然に分割されることはありませんので、自身が管理していない遺産である現金を手元に置きたいのであれば、遺産分割協議を行う必要があります。

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この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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