箕面市 H.O.さん

私の父は箕面市内で農家をしていたのですが、先日亡くなり、田畑や実家の不動産を相続することになりました。
ただ、弟がいくつかの田畑については生前に贈与を受けたので遺産には含まれないと言いだしました。
私や他の兄弟は父から何も聞いておらず、本当に弟が言うような贈与があったのかを疑っています。
このような場合、何かできることはないのでしょうか。

司法書士

相続により不動産などの財産を相続して、遺産分割を行う際に、そもそも、ある財産が相続財産に含まれるのかということ自体が争われることがあります。
この場合、遺産に含まれるのかに争いのある財産が遺産に含まれることを確認することを求めて訴えを提起することができます。

遺産分割の前提として、ある財産が相続財産に含まれることの確認請求

相続が開始した後に遺産分割を行おうとした際に、ある財産が相続財産に含まれること自体が争いになっているという場合に、その財産が相続財産に含まれるものであることの確認を請求する訴えは適法であると、次に挙げる最高裁判所の判例は言っています。

原審は、第一審判決添付の物件目録(一)ないし(七)、(一〇)及び(一一)記載の各不動産(但し、(一〇)については共有持分二分の一。以下同じ。)が昭和三五年一月二〇日に死亡した訴外Dの遺産であり、被上告人ら及び上告人らがその共同相続人(代襲相続人及び共同相続人の各相続人を含む。以下同じ。)であるとの事実を確定したうえ、遺産分割の前提問題として、右不動産が右Dの遺産であることの確認を求める被上告人らの請求を認容すべきものとしているところ、このような確認の訴え(以下「遺産確認の訴え」という。)の適否につき、以下職権をもつて検討することとする。
本件のように、共同相続人間において、共同相続人の範囲及び各法定相続分の割合については実質的な争いがなく、ある財産が被相続人の遺産に属するか否かについて争いのある場合、当該財産が被相続人の遺産に属することの確定を求めて当該財産につき自己の法定相続分に応じた共有持分を有することの確認を求める訴えを
提起することは、もとより許されるものであり、通常はこれによつて原告の目的は達しうるところであるが、右訴えにおける原告勝訴の確定判決は、原告が当該財産につき右共有持分を有することを既判力をもつて確定するにとどまり、その取得原因が被相続人からの相続であることまで確定するものでないことはいうまでもなく、右確定判決に従つて当該財産を遺産分割の対象としてされた遺産分割の審判が確定しても、審判における遺産帰属性の判断は既判力を有しない結果(最高裁昭和三九年(ク)第一一四号同四一年三月二日大法廷決定・民集二〇巻三号三六〇頁参照)、のちの民事訴訟における裁判により当該財産の遺産帰属性が否定され、ひいては右審判も効力を失うこととなる余地があり、それでは、遺産分割の前提問題として遺産に属するか否かの争いに決着をつけようとした原告の意図に必ずしもそぐわないこととなる一方、争いのある財産の遺産帰属性さえ確定されれば、遺産分割の手続が進められ、当該財産についても改めてその帰属が決められることになるのであるから、当該財産について各共同相続人が有する共有持分の割合を確定することは、さほど意味があるものとは考えられないところである。
これに対し、遺産確認の訴えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであつて、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもつて確定し、したがつて、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もつて、原告の前記意思によりかなつた紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである。
もとより、共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法二四九条以下に規定する共有と性質を異にするものではないが(最高裁昭和二八年(オ)第一六三号同三〇年五月三一日第三小法廷判決・民集九巻六号七九三頁参照)、共同所有の関係を解消するためにとるべき裁判手続は、前者では遺産分割審判であり、後者では共有物分割訴訟であつて(最高裁昭和四七年(オ)第一二一号同五〇年一一月七日第二小法廷判決・民集二九巻一〇号一五二五頁参照)、それによる所有権得の効力も相違するというように制度上の差異があることは否定しえず、その差異から生じる必要性のために遺産確認の訴えを認めることは、分割前の遺産の共有が民法二四九条以下に規定する共有と基本的に共同所有の性質を同じくすることと矛盾するものではない。

最判昭和61年3月13日 民集 第40巻2号389頁

遺産分割が相続人間で円滑に纏まらない場合は遺産分割審判を請求することになりますが、この手続きを行う前に、遺産確認の訴えによって、相続財産の範囲を確認しておけば、その後の遺産分割審判がのちのち覆るということもなくなります。
なので、遺産の範囲事態に争いがある、または後々、争ってきそうな相続人がいるという場合は、まず、遺産の範囲を確認することが肝要です。

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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