妻と結婚後、3人の子供にも恵まれましたので、こういっては何なんですが、結婚当初からあまり妻との関係は良好ではありませんでした。
そして、数年前から私は箕面市の家を出て、家族とは別に暮らしていました。
私も家を出てから親密なった女性がおりまして、そのことが妻に知られて以降はさらに関係が悪化しました。
生活費については妻と子供3人が暮らしていくには十分すぎるくらいの金額を渡していたのですが、さきの女性が知られて以降は妻に婚姻費用の分担を請求され、裁判所で一定額を毎月支払うようにとする審判が出ました。
その後もその費用は毎月欠かさずに支払っていたのですが、先日、あることで次男は私の子供では無いのではないかと思うに至り、妻を問い詰めると、次男は他の男の子供であることが分かりました。
ここに至ってはもはや離婚するしかないと思い、離婚を請求したのですが、妻からは子供の監護費用を支払えとの請求を起こされました。
次男以外の子供は私の子供でもありますので、もちろん支払うつもりです。
しかし、次男は私の子供でもないのに監護費用を支払わなければならないのでしょうか。
血縁的に自分の子供でないことが分かったとしても、法的には自分の子供であるという場合には原則として、その子供の監護費用を支払う必要があると思われます。
血縁的に自分の子供ではないという場合に嫡出否認の訴えや親子関係不存在確認の訴えで法的な親子関係を否定しなければなりません。
しかし、このような訴えによって親子関係を否定できないときでも、一定の場合には監護費用の分担が認められないこともあります。
子供監護費用の支払い請求が権利の濫用とされた事案
血縁的に夫の子供ではない子供の監護費用を請求した訴えが権利の濫用とされた事件があります。
事案は次のようなものでした。
(1) 上告人(昭和37年▲月▲日生)と被上告人(昭和36年▲月▲日生)とは,平成3年▲月▲日に婚姻の届出をした夫婦である。被上告人は,平成8年▲月▲日に上告人の子である長男Bを,平成11年▲月▲日に上告人の子である三男Cをそれぞれ出産したが,その間の平成9年▲月▲日ころ上告人以外の男性と性的関係を持ち,平成10年▲月▲日に二男Aを出産した。二男と上告人との間には,自然的血縁関係がなく,被上告人は,遅くとも同年▲月ころまでにそのことを知ったが,それを上告人に告げなかった。
最判平成23年3月18日 集民第236号213頁
(2) 上告人は,平成9年ころから,被上告人に通帳やキャッシュカードを預け,その口座から生活費を支出することを許容しており,平成11年ころ,一定額の生活費を被上告人に交付するようになった後も,被上告人の要求に応じて,平成12年1月ころから平成15年末まで,ほぼ毎月150万円程度の生活費を被上告人に交付してきた。
(3) 上告人と被上告人との婚姻関係は,上告人が被上告人以外の女性と性的関係を持ったことなどから,平成16年1月末ころ破綻した。その後,上告人に対して,被上告人に婚姻費用として月額55万円を支払うよう命ずる審判がされ,同審判は確定した。
(4) 上告人は,平成17年4月に初めて,二男との間には自然的血縁関係がないことを知った。上告人は,同年7月,二男との間の親子関係不存在確認の訴え等を提起したが,同訴えを却下する判決が言い渡され,同判決は確定した。
(5) 上告人が被上告人に分与すべき積極財産は,合計約1270万円相当である。
3 原審は,上告人と被上告人とを離婚し,長男,二男及び三男の親権者をいずれも被上告人と定めるべきものとするなどした上,二男の監護費用につき,次のとおり判断した。
上告人と二男との間に法律上の親子関係がある以上,上告人はその監護費用を分担する義務を負い,その分担額については,長男及び三男と同額である月額14万円と定めるのが相当である。
このような事案において最高裁判所は次のように判断しました。
原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 前記事実関係によれば,被上告人は,上告人と婚姻関係にあったにもかかわらず,上告人以外の男性と性的関係を持ち,その結果,二男を出産したというのである。
しかも,被上告人は,それから約2か月以内に二男と上告人との間に自然的血縁関係がないことを知ったにもかかわらず,そのことを上告人に告げず,上告人がこれを知ったのは二男の出産から約7年後のことであった。そのため,上告人は,二男につき,民法777条所定の出訴期間内に嫡出否認の訴えを提起することができず,そのことを知った後に提起した親子関係不存在確認の訴えは却下され,もはや上告人が二男との親子関係を否定する法的手段は残されていない。
他方,上告人は,被上告人に通帳等を預けてその口座から生活費を支出することを許容し,その後も,婚姻関係が破綻する前の約4年間,被上告人に対し月額150万円程度の相当に高額な生活費を交付することにより,二男を含む家族の生活費を負担しており,婚姻関係破綻後においても,上告人に対して,月額55万円を被上告人に支払うよう命ずる審判が確定している。
このように,上告人はこれまでに二男の養育・監護のための費用を十分に分担してきており,上告人が二男との親子関係を否定することができなくなった上記の経緯に照らせば,上告人に離婚後も二男の監護費用を分担させることは,過大な負担を課するものというべきである。
さらに,被上告人は上告人との離婚に伴い,相当多額の財産分与を受けることになるのであって,離婚後の二男の監護費用を専ら被上告人において分担することができないような事情はうかがわれない。
そうすると,上記の監護費用を専ら被上告人に分担させたとしても,子の福祉に反するとはいえない。
(2) 以上の事情を総合考慮すると,被上告人が上告人に対し離婚後の二男の監護費用の分担を求めることは,監護費用の分担につき判断するに当たっては子の福祉に十分配慮すべきであることを考慮してもなお,権利の濫用に当たるというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。
権利の濫用とされるかどうかは、その事案ごとの事実関係が非常に重要になってきますので、この件で子供の監護費用を請求することが権利の濫用とされたとしても、別の案件でも同じように言えるかは別の問題と言えます。
ただ、事案の類似性があれば同じような判断が示されることも十分に予測できます。
ご相談の件では、次男さんがご自分と血のつながりが無いことを知った経緯や時期、元妻がそのことを知っていたのかなど、より詳細に上記の最高裁判所での事案との類似性を判断する必要があります。
この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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