池田市 F.I.さん

先日、父が亡くなり遺産分割を相続人で行いました。
父の相続人は母と私と兄弟2人です。
父は池田市内に土地と建物を所有しており、これらの不動産と預貯金が相続財産となりますが、遺産分割では母は兄に自分の相続分を譲渡することになりました。
その後、今度は母も亡くなったのですが、母は兄に全財産を相続せるとする遺言を残していました。
この遺言によって私と弟の相続分は無くなることになるのですが、父の相続の際にした相続分の譲渡分も考えると、私と弟は母の相続に関して遺留分も相続できないことになるのではないでしょうか。
私も弟もせめて遺留分ぐらいは兄に請求したいと思っているのですが、遺留分を算定する際の「贈与」に相続分の譲渡も含まれるのでしょうか。

司法書士

遺留分を算定する際に相続財産に持ち戻す「贈与」に「相続分の譲渡」も含まれるのかという問題について最高裁判所は一定の例外を除いて、原則として含まれると考えています。
そこで、ご相談の場合でもお母さまが生前にした「相続分の譲渡」も「贈与」に含まれると考えられますので、この相続分の譲渡についての価値を持ち戻して遺留分を計算することになります。
この結果、ご自身の相続分が遺留分に満たない場合には、お兄様に対して遺留分相当額の支払いを求めることができます。

相続人に対する相続分の譲渡が遺留分算定の際に考慮されるのか

問題になったのは、次のような事案に関してです。

(1) 亡Aは亡Bの妻であり,上告人,被上告人及びCはいずれも亡Bと亡Aとの間の子である。Dは,被上告人の妻であって,亡B及び亡Aと養子縁組をしたものである。
(2) 亡Bは,平成20年12月に死亡した。亡Bの法定相続人は,亡A,上告人,被上告人,C及びDである。
(3) 亡A及びDは,亡Bの遺産についての遺産分割調停手続において,遺産分割が未了の間に,被上告人に対し,各自の相続分を譲渡し(以下,亡Aのした相続分の譲渡を「本件相続分譲渡」という。),同手続から脱退した。
(4) 亡Aは,平成22年8月,その有する全財産を被上告人に相続させる旨の公正証書遺言をした。
(5) 亡Bの遺産につき,上告人,被上告人及びCの間において,平成22年12月,遺産分割調停が成立し、これにより,上告人は第1審判決別紙「亡Bの遺産目録」記載第1の6の土地及び同目録記載第2の4ないし8の建物を取得し,被上告人は同目録記載第1の5及び7ないし13の土地,同目録記載第2の2,3,9及び10の建物,同目録記載第4の現金及び預貯金並びに同目録記載第5のその他の財産を取得し,Cは同目録記載第1の1ないし4の土地及び同目録記載第2の1の建物を取得した。
(6) 亡Aは,平成26年7月に死亡した。その法定相続人は,上告人,被上告人,C及びDである。
(7) 亡Aは,その相続開始時において,約35万円の預金債権を有していたほか,約36万円の未払介護施設利用料債務を負っていた。
(8) 上告人は,平成26年11月,被上告人に対し,亡Aの相続に関して遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。
2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件相続分譲渡によって遺留分を侵害されたとして,被上告人が上記1(5)の遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求める事案である。本件相続分譲渡が,亡Aの相続において,その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条,903条1項)に当たるか否かが争われている。

最判平成30年10月19日 民集第72巻5号900頁

この事案に関して最高裁判所は次のように判断しました。

共同相続人間で相続分の譲渡がされたときは,積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転し,相続分の譲渡に伴って個々の相続財産についての共有持分の移転も生ずるものと解される。
そして,相続分の譲渡を受けた共同相続人は,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分とを合計した相続分を有する者として遺産分割手続等に加わり,当該遺産分割手続等において,他の共同相続人に対し,従前から有していた相続分と上記譲渡に係る相続分との合計に相当する価額の相続財産の分配を求めることが
できることとなる。
このように,相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができる。
遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは,以上のように解することの妨げとなるものではない。
したがって,共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。

ここでは「譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き」とされていますので、ご相談においてもこの点を考慮する必要があります。
お母さまに住宅ローンなどの債務があり、その債務ごとお兄様が引き受けていて、差引計算をするとお兄様のそうおz区分がプラスにはならないなどの事情があれば格別、そのような事情がないのであれば結論として遺留分侵害が成立するものと思われます。

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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