箕面市 Y.U.さん

私の家族は父母と兄の4人家族で箕面市に住んでいました。
母はしばらく前に既に亡くなっており、兄は就職を機に実家を出て今は大阪市内に住んでいますので、箕面市の実家には私と父の2人で住んでいました。
この度、父が亡くなり、箕面市の不動産も含めて相続をどうするかを兄と話し合っていたのですが、兄は私は実家にずっと住んでいるのだから、父が亡くなったあとの使用料を支払うべきだと言っています。父が亡くなった後は不動産は共有になっているのだから、自分の持ち分の使用料を支払えというのです。
父が亡くなる前は父に賃料を支払えなどと言われたこともないのに、父が亡くなったとたん、実家の使用料を支払わなければならないのでしょうか。

司法書士

結論から言いますと、今回のご相談をお聞きする限りでは、遺産分割が成立して箕面市の不動産を誰が相続するかが確定するまでは、お兄様に使用料を支払う必要はないと思われます。

相続財産に含まれる不動産を相続開始後に使用した場合の法律関係

遺産の中に不動産が含まれる場合に、相続開始後もその不動産を一部の相続人だけが使用しているということは、よくあることです。
この場合に、使用していない相続人から、使用している相続人へ、その不動産の使用料を不当利得として支払えということができるのかについて最高裁判所は次のように判断しています。

一 本件上告に係る被上告人らの請求は、上告人ら及び被上告人らは第一審判決添付物件目録記載の不動産の共有者であるが、上告人らは本件不動産の全部を占有、使用しており、このことによって被上告人らにその持分に応じた賃料相当額の損害を発生させているとして、上告人らに対し、不法行為に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求として、被上告人ら各自の持分に応じた本件不動産の賃料相当額の
支払を求めるものである。
二 原審の確定した事実関係の概要は、(一) Dは昭和六三年九月二四日に死亡した、(二) 被上告人B1はDの遺言により一六分の二の割合による遺産の包括遺贈を受けた者であり、上告人ら及びその余の被上告人らはDの相続人である、(三) 本件不動産はDの遺産であり、一筆の土地と同土地上の一棟の建物から成る、(
四) 上告人らは、Dの生前から、本件不動産においてDと共にその家族として同居生活をしてきたもので、相続開始後も本件不動産の全部を占有、使用している、というのである。
三 原審は、右事実関係の下において、自己の持分に相当する範囲を超えて本件不動産全部を占有、使用する持分権者は、これを占有、使用していない他の持分権者の損失の下に法律上の原因なく利益を得ているのであるから、格別の合意のない限り、他の持分権者に対して、共有物の賃料相当額に依拠して算出された金額につ
いて不当利得返還義務を負うと判断して、被上告人らの不当利得返還請求を認容すべきものとした。
四 しかしながら、原審の右判断は直ちに是認することができない。その理由は、次のとおりである。
共同相続人の一人が相続開始前から被相続人の許諾を得て遺産である建物において被相続人と同居してきたときは、特段の事情のない限り、被相続人と右同居の相続人との間において、被相続人が死亡し相続が開始した後も、遺産分割により右建物の所有関係が最終的に確定するまでの間は、引き続き右同居の相続人にこれを
無償で使用させる旨の合意があったものと推認されるのであって、被相続人が死亡した場合は、この時から少なくとも遺産分割終了までの間は、被相続人の地位を承継した他の相続人等が貸主となり、右同居の相続人を借主とする右建物の使用貸借契約関係が存続することになるものというべきである。
けだし、建物が右同居の相続人の居住の場であり、同人の居住が被相続人の許諾に基づくものであったことか
らすると、遺産分割までは同居の相続人に建物全部の使用権原を与えて相続開始前と同一の態様における無償による使用を認めることが、被相続人及び同居の相続人の通常の意思に合致するといえるからである。
本件についてこれを見るのに、上告人らは、Dの相続人であり、本件不動産においてDの家族として同人と同居生活をしてきたというのであるから、特段の事情のない限り、Dと上告人らの間には本件建物について右の趣旨の使用貸借契約が成立していたものと推認するのが相当であり、上告人らの本件建物の占有、使用が右使用貸借契約に基づくものであるならば、これにより上告人らが得る利益に法律上の原因がないということはできないから、被上告人らの不当利得返還請求は理由がないものというべきである。
そうすると、これらの点について審理を尽くさず、上告人らに直ちに不当利得が成立するとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨はこ
の趣旨をいうものとして理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中上告人ら敗訴部分は破棄を免れない。そして、右部分については、使用貸借契約の成否等について更に審理を尽くさせるため、原審に差し戻すこととする。

最判平成8年12月17日 民集第50巻10号2778頁

通常、不動産が共有されている場合に自身の持ち分以上の部分を使用している共有者がいる場合、例えば1つの不動産を2人で共有しているが、実際には1人が単独で使用している場合は、その単独使用によって自身の持ち分に応じた使用が妨げられているので、その分の使用利益の返還を求めることができます。
ただ、単独で使用することについて何かしらの正当な理由があれば、単独使用者は使用利益を変換する必要はありません。
これをそうぞくについて考えると、上記の最高裁判所の判例では、もともと亡くなられた被相続人と現在使用している相続人との間で無償で利用させるという使用貸借契約があり、この契約を相続人各自が受け継いでいるので、段毒で使用する「正当な理由」があると判断されたものと思われます。

単独使用している相続人が配偶者の場合は配偶者短期居住権が認められますので、遺産分割成立後6か月を経過するまでは相続建物の使用権が認められます。

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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