豊中市 K.H.さん

私は父が亡くなった場合の相続を見越して、父と信託契約を交わしています。
信託契約は父の生存中は、父の所有する豊中市内の土地・建物について管理・処分等を通じて父の生活費・介護費等に必要な資産の運用等を行うことを目的としたものです。
この信託契約は父の死亡まで続くものとし、また、父の死亡後に残った資産については私が受け継ぐものとしていました。
そして、双方の合意がないと信託契約を解除できないように私と父の合意により、信託契約を解除することができるとも定めていました。
しかし、最近になって信託目的の土地に新しく建物を建てて私の兄弟と住むと言い出しました。
私は信託契約上、土地の管理や建物の建築についても私が処理することとになっており、また、父の住まいはちゃんとしたものがあるので、新築する必要もなく、兄弟に言いくるめられて無駄な建物を建てようとしているようにしか感じられません。
そこで、父に新築はしない旨を伝えると、父は私に騙されて信託契約をしたとか、元々も信託契約は私の兄弟と住む家を建てるために契約したなどと言い出して信託契約を解除すると言うようになりました。
私としてはこれまでも、そしてこれからも父のために財産の管理を行てきたつもりですし、信託契約を解除する気はありません。
父が言うように、この信託契約は解除されてしまうのでしょうか。

司法書士

信託契約の内容をもう少し詳しくお聞きしないことには正確にはお答えできませんが、契約中に「信託契約の解除は双方の合意により行う」との文言があるのであれば、一方低名解除はできないと考えられていますので、お父様が一方的に解除することはできません。
詐欺かどうかや信託目的がどうかについてはその当時の事情によりますが、お聞きしている限りは詐欺には当たらず、信託目的にお父様の言うようなものが含まれていることはないと思われます。

財産承継を目的とした信託契約の解除の可否

ご相談と同じように不動産等を信託の目的として、親子間で結ばれた信託契約に、解除についての条項が定められた場合について、当該条項が信託法の特則として、信託法の規定に優先して適用されると判断した裁判例があります。

信託法164条3項は信託行為に別段の定めがあるときはその定めるところによるとして、同条1項が任意規定であることを明らかにしている。
-中略-
(本件信託契約11条は)「別段の定め」であって、本件信託において、同法164条1項に優先して適用される規定であるというべきである。

東京地判平成30年10月23日 金法2122号85頁

この判断を前提にすると、今回のご相談でも信託契約の一方的な解除はできないと思われます。

このような信託がなされない場合、ご相談で信託の目的とされている土地と建物は相続財産となり相続人で遺産分割を行うことになります。
また、死因贈与や遺贈として特定の方に送ることもできますが、その場合は一方的な撤回が可能となります。
そこで、一方的に撤回したり解除したりすることができないようにするためには、信託契約を行い、死後は受託者に帰属するとすることが考えられます。

ただ、そうすると今度は他の相続人との間で相続できる財産に差が生じる可能性が出てきますので、親族間で確執をもたらさないように、事前によく話し合うことが肝要です。

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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