私は夫と子供と共に箕面市内のアパートに住んでいました。
夫が病気療養のために仕事を辞めることになり、私の収入だけでは家族を養うことができませんでした。そこで、生活保護を受けようと考えたのですが、私の収入が保護費から差し引かれることになるようでしたので、夫の医療費のことも考えて便宜上、離婚することにしました。夫との関係が悪くなったわけではなく、離婚後も従前と同様の生活は続けています。
しかし、離婚後に夫が通院中の交通事故によって亡くなってしまい、相手方に損害賠償を求めたいのですが、離婚してしまっている以上、夫の相続権はないと言われました。
今となっては離婚したことが悔やまれるのですが、もともと生活保護を受けようとしただけで、本当に離婚する意思はなかったのですから、離婚を無効にすることはできないのでしょうか。
離婚届を提出際に離婚をする意思がない場合は、その離婚は無効になると一般的に考えられています。
ただ、この「離婚をする意思」がどのようなものかについては見解が分かれていたのですが、裁判所は「法律上の婚姻関係を解消する意思」があれば足りると考えているようなので、生活保護を受けるための便宜上とはいえ「法律上の婚姻関係を解消する意思」があった以上、離婚を無効にすることはできないと思われます。
離婚意思の内容に関する最高裁判所の判例
生活保護の需給を受けるための手段として離婚届がなされたが、届出の後も夫婦関係に変わりはなく、そのまま依存と変わらない生活を続けていたという事案において、この離婚が無効になるのかを判断した判例があります。
原審の適法に確定した事実関係(*)のもとにおいて、本件離婚の届出が、法律上の婚姻関係を解消する意思の合致に基づいてされたものであつて、本件離婚を無効とすることはできないとした原審の判断は、その説示に徴し、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。
*夫婦が事実上の婚姻関係を継続しつつ、単に生活扶助を受けるための方便として協議離婚の届出をした場合
最判昭和57年3月26日 集民第135号449頁
この判断を前提にすると、今回のご相談でも離婚自体を無効にすることは難しいと思われます。
あとは、離婚後も依然と同じ関係を続けていたということですので、内縁関係に基づいて何らかの権利を主張することができないかを検討することになります。
この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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