箕面市 S.A.さん

妻が子供を連れて、箕面市の実家に帰ってしまいました。
何とかして、元の生活に戻る方法はないでしょうか。

司法書士

どうしても同居を望むのであれば、同居を認める審決をもとめて家事審判を請求することになります。
ただ、同居を命じる審決が下されたとしても、相手の自由意思が尊重されることから強制執行にはなじまないとされていますので、直接強制(民法414条1項本文)はすることができず、間接強制(民事執行法172条)もできないと考えられています。
ただ、同居義務が認められても同居しないという場合は、今回のご相談にはそぐわないかもしれませんが、離婚原因にはなります。

1.夫婦の同居義務

夫婦は同居して互いに協力し、扶助する義務を負います(民法752条)。
このように抽象的には夫婦には同居義務がありますが、具体的のどのような同居義務を負うのかは、その夫婦の事情により異なります。
そして、正当な理由がないのに夫婦の片方が同居を拒む場合は、同居の審判を請求できるとされています(家事審判法39条)。

この審判、もしくは審判の前に家事調停が行われることもありますが、これらの手続きの中で夫婦で話し合いを行い、同居を認めるか、同居しない正当な理由があるかが判断されることになります。

夫婦の円満な同居生活が期待できないと判断されると、同居請求は否定されます。
また、夫婦関係が破綻していると判断されると、同居請求が否定されるにとどまらず、別居が望ましいと判断されることもあります。

また、今回のご相談とは関係ありませんが、仮にDVが行われているのであれば、DV防止法10条の保護命令で実質的に別居が命じられることもあります。

2.家事審判での判断と同居義務について

家事審判で判断されることは夫婦の同居義務があることを前提として、その具体的な内容を定めるものです。
なので、同居義務の存在そのものを争う場合には訴訟で同居義務の不存在を争うことになります。

 憲法八二条は「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ」旨規定する。
 そして如何なる事項を公開の法廷における対審及び判決によつて裁判すべきかについて、憲法は何ら規定を設けていない。しかし、法律上の実体的権利義務自体につき争があり、これを確定するには、公開の法廷における対審及び判決によるべきものと解する。
 けだし、法律上の実体的権利義務自体を確定することが固有の司法権の主たる作用であり、かかる争訟を非訟事件手続または審判事件手続により、決定の形式を以て裁判することは、前記憲法の規定を回避することになり、立法を以てしても許されざるところであると解すべきであるからである。
 家事審判法九条一項乙類は、夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する事件を婚姻費用の分担、財産分与、扶養、遺産分割等の事件と共に、審判事項として審判手続により審判の形式を以て裁判すべき旨規定している。その趣旨とするところは、夫婦同居の義務その他前記の親族法、相続法上の権利義務は、多分に倫理的、道義的な要素を含む身分関係のものであるから、一般訴訟事件の如く当事者の対立抗争の形式による弁論主義によることを避け、先ず当事者の協議により解決せしめるため調停を試み、調停不成立の場合に審判手続に移し、非公開にて審理を進め、職権を以て事実の探知及び必要な証拠調を行わしめるなど、訴訟事件に比し簡易迅速に処理せしめることとし、更に決定の一種である審判の形式により裁判せしめることが、かかる身分関係の事件の処理としてふさわしいと考えたものであると解する。
 しかし、前記同居義務等は多分に倫理的、道義的な要素を含むとはいえ、法律上の実体的権利義務であることは否定できないところであるから、かかる権利義務自体を終局的に確定するには公開の法廷における対審及び判決によつて為すべきものと解せられる(旧人事訴訟手続法〔家事審判法施行法による改正前のもの〕一条一項参照)。
 従つて前記の審判は夫婦同居の義務等の実体的権利義務自体を確定する趣旨のものではなく、これら実体的権利義務の存することを前提として、例えば夫婦の同居についていえば、その同居の時期、場所、態様等について具体的内容を定める処分であり、また必要に応じてこれに基づき給付を命ずる処分であると解するの
が相当である。
 けだし、民法は同居の時期、場所、態様について一定の基準を規定していないのであるから、家庭裁判所が後見的立場から、合目的の見地に立つて、裁量権を行使してその具体的内容を形成することが必要であり、かかる裁判こそは、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審及び判決によつて為すことを要しないものであるからである。
 すなわち、家事審判法による審判は形成的効力を有し、また、これに基づき給付を命じた場合には、執行力ある債務名義と同一の効力を有するものであることは同法一五条の明定するところであるが、同法二
五条三項の調停に代わる審判が確定した場合には、これに確定判決と同一の効力を認めているところより考察するときは、その他の審判については確定判決と同一の効力を認めない立法の趣旨と解せられる。然りとすれば、審判確定後は、審判の形成的効力については争いえないところであるが、その前提たる同居義務等自体については公開の法廷における対審及び判決を求める途が閉ざされているわけではない。
 従つて、同法の審判に関する規定は何ら憲法八二条、三二条に牴触するものとはいい難く、また、これに従つて為した原決定にも違憲の廉はない。それ故、違憲を主張する論旨は理由がなく、その余の論旨は原決定の違憲を主張するものではないから、特別抗告の理由にあたらない。

最判昭和40年6月30日(民集 第19巻4号1089頁)

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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