私は夫と10数年間に結婚して子供もおりますが、夫との仲はあまり良行とはいない状況でした。そこで、一度、お互い頭を冷やしたほうが良いと考えて別居することとなりました。結婚後は大阪市内に住んでいたのですが、今は子供と共に池田市内の実家に身を寄せています。
私は離婚をしようとまでは思っていなかったのですが、夫が勝手に離婚届を提出していたようで、さらに許せないのですが、その後、再婚までしていたことがわかりました。
勝手に離婚されていたことについては裁判で無効が確定したので安心したのですが、今度は再婚相手と夫に対して重婚の取り消しを請求したいと思っています。
ただ、夫は離婚すると言っているのですが、そんなことは信じられませんし、そもそも重婚なのですから取り消されて当たりまえだと思っています。
私が訴えた後に、離婚が成立したら、私の訴えはどうなるのでしょうか。
重婚の取り消し請求をした後に、離婚によりその重婚が解消されてしまえば重婚取り消しの訴えは原則として却下されることになります。
1.重婚による婚姻の取消と離婚の効力の差について
民法748条によると「婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる」とされていますので、この点は離婚の場合と変わりません。
また同法749条によれば「第七百二十八条第一項、第七百六十六条から第七百六十九条まで、第七百九十条第一項ただし書並びに第八百十九条第二項、第三項、第五項及び第六項の規定は、婚姻の取消しについて準用する。」として婚姻の取り消しの場合に離婚の規定の多くが適用されることになっていますので、あまり両者に違いはないように思われます。
しかし、婚姻の取り消しの場合には後婚の相手方の意識によって損害賠償の範囲が異なることが定められています。
同法748条2項
「婚姻の時においてその取消しの原因があることを知らなかった当事者が、婚姻によって財産を得たときは、現に利益を受けている限度において、その返還をしなければならない。
同3項
「婚姻の時においてその取消しの原因があることを知っていた当事者は、婚姻によって得た利益の全部を返還しなければならない。この場合において、相手方が善意であったときは、これに対して損害を賠償する責任を負う。」
なので、後婚を取り消す側からすると離婚を待つより取り消しが認められた方が有利になる場合もありそうです。
2.裁判所の判断
しかし、最高裁判所は次にように、重婚において、後婚が離婚によつて解消された場合には、特段の事情のない限り、後婚の取消を請求することは許されないと判断しました。
重婚の場合において、後婚が離婚によつて解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である。
最判昭和57年9月28日(民集 第36巻8号1642頁)
けだし、婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法七四八条、七四九条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは「特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。
これを本件についてみるのに、原審の適法に確定したところによれば、上告人と被上告人B1間の前婚についての協議離婚が無効とされた結果、右協議離婚届出後にされた被上告人B1と同B2間の後婚が被上告人B1につき前婚との関係で重婚となるに至つたものの、前婚の配偶者である上告人が右重婚を理由に提起した後婚の取消を求める本訴の係属中に右後婚が離婚によつて解消されたというのであるから、他に特段の事情について主張立証のない本件においては、重婚を理由として後婚の取消を求めることはもはや許されないものといわなければならない。
最高裁判所は後婚が離婚によって解消すると重婚にあたる婚姻があるという状況が無くなることや、離婚と婚姻取消の効果の差異は小さいことを航路したものと考えられています。
そこで、例えば、後婚の離婚時に過大な財産分与がなされている場合など、離婚と婚姻取消の効果の差異は小さいとは言えない場合には「特段の事情」が認められると考えられています。
この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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