私には妻と2人の姉妹がおりまして、私自身は豊中市内で会社を経営しているのですが、会社は妹が継ぐ予定です。
今回のご相談は姉のことについてです。お恥ずかしい話なのですが、姉は子供のころから素行が悪く、児童相談所のお世話になったり、家庭裁判所の保護処分を受けたり、少年院に入っていたこともありました。
その娘が私たち夫婦の反対にもかかわらず、今度は暴力団員と結婚すると言い出しまして、私の取引先にまで私の名を使って結婚式の招待状を送っていたようなのです。
将来的に私の相続が発生したときに姉の相続を許すと単純な財産だけでなく、豊中市内で経営している会社の株式も相続対象となるので、会社経営に問題が出てくると思います。そこで、断腸の思いですが妻とも相談して、姉の相続を阻止したいと思っているのですが、そのようなことは可能なのでしょうか。
法律上は、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたときは相続人を廃除することを裁判所に請求することができるとされています。
今回のご相談でもご相談者の反対にもかかわらず記名入りで結婚式の招待状を送って反社会的な団体の構成員と関係性を喧伝したことが「重大な侮辱」にあたるのであれば、廃除も認められると思われます。
ただ、廃除は相続人の地位をはく奪するものですから、実際に廃除が認められるかどうかは、そのほかの事情も考慮して判断されることになります。
1.推定相続人の廃除について
民法892条は次のように相続人の地位をはく奪することを認めています。
「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」
一般的にどのような虐待や侮辱等が廃除原因となるのかについてはそれが相続的共同関係や家族的共同生活を破壊するほどのものであることを要するとされており、被相続人の主観的な感情だけにとらわれるのではなく、推定相続人がそのような行為に出るに至った原因や日常の言動、被相続人側の問題、被相続人との人間関係などを総合して客観的に判断すべきであるとされています。
2.「重大な侮辱」にあたると判断された事例
「重大な侮辱」にあたると判断された事例があります。
民法八九二条にいう虐待又は重大な侮辱は、被相続人に対し精神的苦痛を与え又はその名誉を殿損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との家族的生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめるものを含むものと解すべきである。
本件において、前記認定の事実によれば、相手方は、小学校の低学年のころから問題行動を起こすようになり、中学校及び高等学校に在学中を通じて、家出、退学、犯罪性のある者等との交友等の虞犯事件を繰り返して起こし、少年院送致を含む数多くの保護処分を受け、更には自らの行動について責任を持つべき満一八歳に達した後においても、スナックやキャバレーに勤務したり、暴力団員の○○と同棲し、次いで前科のある暴力団の中堅幹部である丁と同棲し、その挙げ句、同人との婚姻の届出をし、その披露宴をするに当たっては、抗告人等が右婚姻に反対であることを知悉していながら、披露宴の招待状に招待者として丁の父と連名で抗告人乙の名を印刷して抗告人等の知人等に送付するに至るという行動に出たものである。
そして、このような相手方の小・中高等学校在学中の一連の行動について、抗告人らは親として最善の努力をしたが、その効果はなく、結局、相手方は、抗告人ら家族と価値観を共有するに至らなかった点はさておいても、右家族に対する帰属感を持つどころか、反社会的集団への帰属感を強め、かかる集団である暴力団の一員であった者と婚姻するに至り、しかもそのことを抗告人らの知人にも知れ渡るような方法で公表したものであって、相手方のこれら一連の行為により、抗告人らが多大な精神的苦痛を受け、また、その名誉が殿損され、その結果抗告人らと相手方との家族的協同生活関係が全く破壊されるに至り、今後もその修復が著しく困難な状況となっているといえる。
そして、相手方に改心の意思が、抗告人らに宥恕の意思があることを推認させる事実関係もないから、抗告人らの本件廃除の申立は理由があるものというべきである。
東京高決平成4年12月11日判例時報1448号130頁
この事例では、被相続人からの廃除請求後に、犯罪歴のある暴力団員と結婚する旨の招待状を被相続人との連名で送付したことについて、「重大な侮辱」にあたるとして廃除が認められました。
今回のご相談でも類似の事情があるのであれば、廃除も認められる可能性があると思われます。
この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。
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