池田市 D.Sさん

私の父は池田市で会社を経営しておりましたが先日亡くなりました。
会社は私が後を継いでいるのですが、父の生前に会社の債務返済に充てるために父名義の池田市内の土地と建物を売却して、その代金を会社債務の返済に充てるようにと売却先も探して、その旨の遺言書も残していました。
ただ、私も悪いのですが、その遺言書を失くしてしまい、父の死後、会社の債務を返済するために土地を売却するという遺産分割協議をしたのですが、弟たちからわざと遺言書を隠して私に有利な相続関係にしたことは相続欠格事由にあたるのだから、土地の売却は無効であると言われています。
わたしは、わざと遺言書をなくしてしまったわけではありませんし、遺産分割協議の内容も弟たちに悪い内容でもありません。
それなのに相続欠格にあたり、相続人の資格を失うことは納得ができません。

司法書士

遺言書を破棄・隠匿した者は相続欠格者とするとされていますが、単に破棄・隠匿行為が故意に行われるだけでは足りず、その行為により不当に利益を得ようとする意志も必要になると考えられていますので、不当な利益を得る目的が無かったのであれば、相続欠格には当たらないと考えます。

1.相続欠格について

民法891条は「次に掲げる者は、相続人となることができない。」として相続人がその資格を失う場合を定めています。そして次に掲げる者として同上5号は「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者」あげています。
そして、この条文の適用に関して、これらの行為を故意に行った場合には直ちに相続人としての資格を失うのか、それとも故意以上のものが必要なのかが議論されていました。
この点に関して、最高裁判所は次のように判断して、故意以上のものが必要と判断しました。

2.遺言書の破棄・隠匿行為が相続欠格にあたるのための条件

相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において、相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、右相続人は、民法八九一条五号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。
けだし、同条五号の趣旨は遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにあるが(最高裁昭和五五年(オ)第五九六号同五六年四月三日第二小法廷判決・民集三五巻三号四三一頁参照)、遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条五号の趣旨に沿わないからである。

最判平成9年1月28日(平成6年(オ)第804号)

このように、最高裁判所は遺言書の破棄・隠匿行為が故意の行われただけでなく、その行為が相続に関して不当な利益を目的として行われることが必要であると判断したのです。

3.不当な目的の判断について

具体的にどのような行為が「相続に関して不当な利益を目的として行われ」たといえるのかについては、例えば
(1)自己に対する全部の遺産を包括的に遺贈するとしてされた遺言書を、自身は法定相続分でよいと考えて破棄する場合や。
(2)その自身が包括的に相続するという遺言書を示すことなく、他の相続人が全てが遺留分相当額以上のものを取得する遺産分割協議を成立させた場合、
等が考えられるとされています。

4.ご相談について

ご相談でも相談者様の弟さんには遺留分以上の相続分を認めた遺産分割協議がなされているようですので、相続欠格事由には当たらず、相続人としての資格を失うことにはならないと思われます。
相続人としての資格を失いませんので、会社の債務を支払うために相談者様が池田市内の不動産を受け継ぐような遺産分割協議をしていたとしても、その協議結果は有効に扱われます。

この記事は上記判決をモデルにした架空の事例です。
また、記事掲載時の法令・判例に基づいています。
ご覧の時点で裁判所の判断に合致しないこともありますのでご留意ください。

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